ステマは違法?ステマの定義や事例などを徹底解説!

近年、様々な状況で「ステマ」という言葉をよく耳にするようになりました。しかし、なんとなくステマはやってはいけない行為だと認識しているけれども、具体的な定義や対策まで十分に理解はできていないという人が多いのではないでしょうか。本記事ではステマの定義や種類を詳しく解説します。本記事を読むことでステマの何が問題で正しい対処をするために何を気をつければよいのかがわかります。

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ステマ対策知識は必須のリテラシー

広報担当、SNS担当、マーケティング担当といった関連部署に所属する人にとって、ステマに関する知識は、リスクマネジメントの必須項目です。ステマについて基本的な知識がないと、企業のブランドイメージにまで傷がつくなど後々重大なことになる場合もあります。また、担当者は気をつけていても、クライアント、他部署、上層部などから「ステマ」になるようなマーケティングを要求されるケースも想定できます。「ステマ」という手法のどこが問題なのか正しく理解しておかなければ、力関係によって押し切られてしまうという事態も十分にあり得るでしょう。

ステマの定義

ステマとはステルスマーケティング(Stealth Marketing)の略語です。日本ではステルスマーケティングという言葉のほうがよく知られていますが、英語圏ではアンダーカバーマーケティング(Undercover Marketing)という表現もよく使われます。ステルスは「こっそり行う・隠密に行う」、アンダーカバーは「秘密に行う・覆面の」といった意味があります。ここからも分かる通り、ステルスマーケティングはユーザーに広告だと気づかれないように宣伝を行うマーケティング手法のことを一般的に指します。

サクラやヤラセもステマ

こうした手法は古くから存在し「サクラ」「やらせ」といった行為もステルスマーケティングの一種であるとされています。新聞や雑誌、TVやラジオといったオールドメディアにもステマの問題は存在し、デジタルマーケティングだけの問題ではないことも理解しておきましょう。

何をもってステマとするかは意見の分かれるところなのですが、大手の代理店やメディア、広告主が参加している国内最大規模の協会としてクチコミ(The Word of Mouth)に関するマーケティング活動に関して啓蒙活動にあたっているWOMマーケティング協議会では、サイト内のQ&Aの中で以下のようにステルスマーケティングを定義しています。

一般的には「広告主がいるにもかかわらず、広告主が明示されない広告」、「広告という形態をとらずに行われるマーケティング活動で、主体が明らかにされないもの」、「本来の広告主とは異なる名称の主体によって行われる、広告・マーケティング活動のこと」などといわれています。(WOMマーケティング協議会)

引用のように、協議会では広告であることを隠匿して行われるクチコミを主体としたマーケティングのことをステルスマーケティングであると定義しています。そして業界の健全なる発展を実現するためにガイドラインを定め、消費者の「正しく情報を知る権利」についての保護に務めているのです。

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ステルスマーケティングの種類

ステルスマーケティングには大きく分けて以下の2種類の型があります。

「なりすまし型」

企業が消費者になりすましてクチコミや評価を書くことで宣伝行為を行うタイプのステマです。例えば、Amazonや楽天のレビュー欄で、業者が消費者になりすまして、高い評価をつけまくったり、好意的な書き込みをするといった行為が、この「なりすまし型」になります。これは好意的なものだけでなく、競合他社の製品に低い評価をつけまくったり悪意のあるコメントを書き込む行為も含まれます。

「利益提供型」

芸能人やインフルエンサーなど社会的に影響力のある人に報酬を渡して宣伝を依頼するタイプのステマです。例えば、YouTuberに商品提供してレビューしてもらうといった場合でも、それが商品提供されているものであるということを隠していれば、ステマであると見なされる可能性があります。こうした種類の説明を見てもわかるとおり、それが問題であると知らなければ、安易に行ってしまうことも十分あり得ることだということが分かると思います。

ステマは違法なの?

日本ではステマを直接規制する法律は存在していません。つまり、ステマ行為そのものは違法ではないと考えられています。一方で、アメリカでは2009年から連邦取引委員会がステマが違法であるとして取り締まりの対象となっています。同じく、EUでも不公正取引行為指令という消費者法に関する指令によって取り締まられています。

日本において直接ステマを規制する法律はないとはいえ、内容によっては「景品表示法」に抵触する場合があり注意が必要です。

景品表示法とは

景品表示法(正式名称:不当景品類及び不当表示防止法)とは、商品やサービスの品質、内容、価格などを偽って表示を行うことを規制した法律です。また、この法律は景品類の提供制限(最高額・総額)や禁止に関する規制に関する事項も含まれており、ユーザーが自主的かつ合理的に良い商品・サービスを選択できるような環境を整備するための法律でもあります。この法律で示されている「不当表示」には以下の2種類があります。

優良誤認表示

「優良誤認表示」とは、品質など内容についての不当表示のことを指します。実際の商品・サービスよりも著しく良いものに見せかけることがこれにあたります。

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有利誤認表示

「有利誤認表示」とは取引条件についての不当表示のことを指します。商品・サービスの価格などを競合商品などと比較して著しく有利にみせることがこれにあたります。インフルエンサーなどが実際の商品・サービスの品質よりも誇張して高く評価し「この商品はすばらしい」といったクチコミを行うと内容を偽っているという点で「優良誤認表示」規制に違反する可能性があります。また「他店より安い」と情報発信しておきながら、実際は安くなかった場合などは「有利誤認表示」規制に違反する可能性があります。こうしたリスクがあることから景品表示法に抵触する恐れがあるのです。

ステマをしてはいけない理由

前項で述べた通り日本ではステマ自体は違法ではいと考えられていますが、法律に触れないようにすればステマしてもOKというわけではありません。ステマを疑われるような行為を行ったことによってネットで炎上し、企業やインフルエンサーが社会的信用を落とすといったケースも実際に起きているのです。

企業もインフルエンサーも社会的信用を損なう

法学の世界では、ソフトローという言葉がよく使われています。これは、法律では決まっていないが、現実の経済社会において国や企業が何らかの拘束感をもって従っている諸規範のことを指します。これらのルールを破ると社会的制裁を受けてしまう不文律のようなものが社会には存在すると考えられているのです。IT業界などでは、戦略として法律に触れないギリギリのラインを攻めていくというベンチャー企業もあると思います。しかし、消費者という対象がある一般市場においては、こうしたソフトローも含めた企業モラルを守って活動していくことが非常に重要になってきます。

ステマに参加したことで社会的に信頼を落とす懸念も

コンプライアンスとは日本語で「法令遵守」のことですが、法令だけでなく倫理や社会規範といったものも対象となります。これらも対象となっているのは倫理や社会規範に反した場合も社会的制裁を受ける可能性があるからです。その賛否は別として、ネットでの炎上も社会制裁の一つであると考えらます。ステマも企業モラルに反する行為であると考える人は多く、炎上によって企業のブランドイメージや社会的評価が毀損されてしまう懸念は非常に大きいのです。加えて、ステマに関わったことが原因となって芸能人やインフルエンサーの人生を狂わせてしまう可能性もあります。したがって「法律的にはセーフ」という考え方や言い訳は、リスクマネジメントにおいても最も避けるべき態度の一つであることを肝に命じておきましょう。

景品表示法以外の法律に抵触する危険性

商品・サービスをアピールをしたいからと誇大表現したり、効果を偽ったり、嘘の内容宣伝すれば、景品表示法以外の法律に触れることもあり得ます。特に注意が必要なのは、健康被害が起きうる医療・健康・美容といった業界です。やらせ・サクラといったステマが発覚すれば、薬事法などにも抵触する可能性も出てくるからです。その他にも、インフルエンサーがデマで他社の悪口を書けば「信用毀損罪」や「偽計業務妨害罪」に問われる可能性もあります。クチコミによるランキングサイトやレビューサイトも例外ではなく、一般の人のクチコミであるといった言い訳は通用しないので注意しましょう。金融商品、医療など消費者の人生に大きな影響を与える業界も同様に、消費者保護を目的とした独自の規制が存在します。規制内容を理解して細心の注意を払う必要があります。

刑事罰、業務停止、訴訟など様々なマイナスが

法律に抵触すれば、刑事上の罰則が与えられるのはもちろんのこと、ステマに騙されて商品・サービスを購入した消費者から損害賠償請求をされる可能性もあり、民事上でもペナルティを課される可能性もあります。さらに、悪質な場合は消費者庁から行政上のペナルティを課されることも十分にあり得るのです。

ステマの具体例

具体的な対策を解説する前に、ケーススタディとしてこれまで問題になったステマの代表的な事例を知って起きましょう。

「アナ雪2」ステマ騒動

2019年の12月に起こったウォルト・ディズニー・ジャパンによるステマ騒動です。試写会に招かれた7人の漫画家が本映画の感想を綴った漫画を情報公開後の12月3日にTwitterに投稿したのですが、いずれの漫画もSNS投稿で効果的であるとされる19時にほぼ同時に投稿され、同一のハッシュタグが付けられていたことを受けて、報酬を受け取って宣伝漫画の制作を依頼されたのではないかというスケルスマーケティングを疑う指摘が相次ぎ、ネットで炎上する事態となりました。

ウォルト・ディズニー・ジャパンは当初、意図的に起きたものではないとの見解を示したのですが、その後12月5日には公式Webサイトで「『アナと雪の女王2 感想漫画企画』に関するおわび」という謝罪文を公開するに至ります。その謝罪文はステマでないことを改めて否定する内容であったのですが、広告表記が抜け落ちたのは漫画家側の落ち度であるとも読める内容だったので、その後も批判が収まりませんでした。そして改めて「クリエイターに責任はない」と記された謝罪文を公開することになったのです。

「食べログ」やらせ事件

2001年1月に、カカクコムグループが運営するグルメレビューサイト「食べログ」において、飲食店が代行業者に金銭を支払ってクチコミを装ったやらせ評価が行われていたことがわかり炎上した事件です。代行業者からの営業を受けた飲食店が、「食べログ」運営者に通報して発覚し、調査の結果やらせを行っていた代行業者が39社も存在していたことが判明しています。「食べログ」は、2017年にも有名レビュアーが特定の飲食店から過剰接待を受けているという記事が週刊誌で報道され、食べログ内において同レビュアーの全てのレビューが削除、もしくは非表示にするという問題も起きています。

ペニーオークション詐欺事件

2012年に、入札ごとに手数料がかかるが通常のオークションよりも低額な入札額から気軽に参加することができるため人気となった「ペニーオークション」という形式のネットオークション運営者が詐欺罪で逮捕され有罪判決を受けた事件が起おきました。この詐欺事件で、複数の芸能人がステルスマーケティングに関わっていたことが判明し、ワイドショーなどで大きく報道されました。このステマに関与したと報道された芸能人の多くは謝罪を表明し、一部は芸能活動を長期間自粛することを余儀なくされた者もいました。

血液クレンジング騒動

2019年10月頃に起きたステマ騒動で「医療用オゾンを血液に混ぜて反応させる点滴」によって血液をクレンジングすると謳った科学的根拠に乏しい医療サービスを複数の有名ブロガーや芸能人が情報発信したことで医療関係者から批判が相次ぎ、BuzzFeed Japanがステマの疑いがあるとして大きく報じたことで大きな社会問題に発展しました。医療に関する情報発信であったためネットで大炎上する事態となっています。

ステマにならないためには?

複数の事例からステマの何が問題なのか十分に理解できたと思いますが、ここからはステマにならないための具体策について解説します。前述したWOMマーケティング協議会から「WOMJガイドライン」というガイドラインが出されています。このガイドラインの「3.関係性の明示」と「4.偽造行為の禁止」は、ステマにならないためのガイドラインとしても参考になる内容なので以下に引用します。

3.関係性の明示
(ア)    情報発信者に対して、WOMマーケティングを目的とした重要な金銭・物品・サービスなどの提供が行われる場合、マーケティング主体(中間事業者でなく主催者)と情報発信者の間には「関係性がある」と定める。(イ)    関係性がある場合、情報発信者に関係性明示を義務付けなければならない。関係性明示は、主体の明示と便益の明示の両方が、情報受信者に容易に理解できる方法で行われるべきである。
 ①    主体の明示:マーケティング主体の名称(企業名・ブランド名など)の明示
 ②    便益の明示:金銭・物品・サービスなどの提供があることの明示
4.偽装行為の禁止
(ア)    WOMマーケティングにおける偽装行為とは、現実とは異なる「情報発信者から発せられる情報」や「消費者行動の履歴」を、あたかも現実であるかのように表現することを指す。投票や評価の水増しのような、言語以外の表現も含める。
(イ)    WOMマーケティングにおける偽装行為は、情報受信者が正確な情報を知る機会を損なうおそれがあるため、行ってはならない。

「3.関係性の明示」では、企業が情報発信者(芸能人やインフルエンサー)に金銭・物品・サービスといった報酬が提供したうえでクチコミマーケティングを依頼する場合は、企業名やブランド名といった広告の主体を明示することと、金銭・物品・サービスなどが提供されているという便益の明示が必要であるとされています。

「4.偽装行為の禁止」では、情報発信者が現実とは異なる情報を、あたかも現実であるように表現することを禁じています。こうした情報発信には、ランキングの投票や、投稿者によるレビューなども含まれています。

クチコミによるマーケティングを展開したい場合は上記2点を指針として留意おきましょう。「3.関係性の明示」の「便益の明示」関連して、協議会では以下の表を参考にすることを推奨しています。「スポンサード」「プロモーション」といった文言をユーザーにわかりやすく明示することで、消費者の正確な情報を知る機会を守っていることになるのです。

広告案件に必須の表示

具体的に、広告案件においては以下のように「関係性の明示」を必ず表示しましょう。

便益の内容
金銭あり 物品・サービスなどのみ
#Promotion, #プロモーション, #Sponsored, #スポンサード, #Supported, #サポーテッド, #Ambassador, #アンバサダー, #協賛, #提供, #タイアップ, #PR

※「#PR」は、パブリックリレーションズと混同のおそれがあるため使用は推奨しませんが、現状のWOMマーケティングの実態に鑑み暫定的に使用を許容します。

#物品提供, #サービス提供, #プレゼント企画, #プレゼントキャンペーン, #モニター, #モニター・プレゼント, #献本 不可

 

上記の表ではハッシュタグとして記されていますが、表記方法について【Promotion】といったように表記方法でも良いとされています。詳しくは「WOMJガイドライン」を参照してください。

最近は、若年層の間ではグーグル検索よりもInstagramなどのSNSからハッシュタグ検索することがトレンドなっているそうです。こうした現象を利用し、すでに多くの企業や飲食店などがハッシュタグによるキャンペーンを展開しています。こうしたハッシュタグキャンペーンも投稿者が得る便益の内容によってはステマになる可能性もありますので十分に注意しましょう。

ステマにならないための対策

ネイティブアドとステマの違い

ステマと似た概念としてネイティブアド(ネイティブ広告)があります。これは、コンテンツの中に広告を自然と溶け込ませることで、ユーザーにコンテンツの一部として見てもらうことを目的とした手法です。ユーザーにストレスを感じさせない宣伝手法として広く流通しております。また、通常の編集記事とよく似た体裁で制作された「記事広告」も、Webメディアがなかった頃から新聞・雑誌などでも広く用いられてきたネイティブアドの一種であると考えられます。

ステルスマーケティングと、これらネイティブアドの違いは「WOMJガイドライン」の「便益の明示」でも規定されているように、「スポンサード」「広告」などの表記があり、ユーザーがそれをしっかりと認識できるかどうかという点にあります。これらの表記があったとしても、文字が小さくてユーザーからわかりにくいといった場合は、意図的に広告であることを隠していると見なされてしまう可能性もあるため、明確に広告であることがわかるように表記するように気をつけましょう。

おわりに

ここまでの内容を見ても分かる通り、ステマは企業にとっても消費者にとっても「百害あって一利なし」です。本記事でステマについて基本的な知識と対処法を身につけて、知らないうちにトラブルに巻き込まれた・巻き込んだということがないように気をつけましょう。重要なのは法律的に何がセーフで何がアウトかということではなく、社会的なルールや企業モラルを含めて常にユーザーの立場に立って考えることです。これはステマになるのでないかと問題を感じたら、そこで立ち止まって考えてみるといった姿勢が非常に大切なのです。

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