グローバル展開する企業が増えている昨今、業務において外国語の文章を扱う企業が増加しています。しかし、人間の手で一つずつ訳していると時間がかかったり、表記揺れが生じたりといった問題が生じることも珍しくありません。そこでおすすめできるのが、CATツールです。CATツールとはコンピュータによる支援翻訳ツールで、翻訳者はCATツールを活用することで翻訳作業の効率化を図れます。本記事では、CATツールの概要を確認した上で、おすすめのCATツールを紹介します。
CAT(翻訳支援)ツールとは
CATとはComputer Assisted Translationの略語で、日本語ではコンピュータ翻訳支援と称します。CATツールとはその名にちなみ、コンピュータが翻訳のサポートを行うツールのことです。CATツールを導入することで、翻訳者は翻訳作業をスピーディーに進められます。また、訳抜けなども回避しやすくなるため、翻訳の品質向上も期待できます。
機械翻訳(MT)との違い
機械翻訳(MT)とは機械が翻訳を行い、訳文を出力するシステムです。たとえば、エキサイト翻訳やGoogle翻訳などが機械翻訳に含まれます。対して、CATツールとは翻訳を支援するツールであり、人間に代わって翻訳を行うツールではありません。CATツールの中にもタイプによっては機械翻訳が組み込まれていますが、翻訳精度と効率アップが目的とされています。
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翻訳管理システム(TMS)との違い
翻訳管理システム(TMS)には、CATツールのように翻訳を支援する機能に加えて、翻訳のワークフローを管理する機能が搭載されています。多くの翻訳管理システムにはCATツールの基本機能の他に、ワークフロー管理や言語アセット一元管理、外部連携などが搭載されているのが特徴です。ファイルや進捗管理に長けているため、翻訳管理システムは複数人で翻訳業務を行う際の利用に適しています。
CATツールの主な機能
CATツールに搭載されている主な機能について、以下の表にまとめました。確認してみてください。
機能 | 内容 |
翻訳メモリ | 原文と訳文が一つのセットになった文章単位の対訳データ。CATツール上で訳文の入力を行うと、翻訳結果が翻訳メモリに自動登録され、対訳データとして蓄積される。 |
用語集 | 表記揺れ防止のため、利用頻度が高い用語をプロジェクトごとに登録できる機能。 |
繰り返し文の訳を統一 | 繰り返し文を登録しておくことで、同じ文が出てきたときに翻訳文を自動で表示してくれる。同じ文が繰り返し登場することが多いマニュアルなどで役立つ機能。 |
過去の翻訳との差分の参照 | 新しい文章を翻訳する際、過去の原文との差分を抽出し、その部分を置き換えるだけでよくなる。長い文を翻訳するときに重宝する。 |
品質保証機能 | 翻訳作業において起こりがちなエラーを自動で検知してくれる機能。訳抜けやスペルミス、訳揺れなどを指摘してくれる。 |
CATツールを導入するメリット
CATツールを導入するメリットは以下の7つです。
- 処理能力のアップ
- 訳抜け防止
- 翻訳資産の蓄積
- 訳語やスタイルの統一性の向上
- 過去の翻訳との差分が分かりやすくなる
- データベース代わりに使える
- 契約する企業によっては受注機会が増える
CATツール・翻訳ツールの選び方
CATツールを選ぶ上で、まずはクラウドベースとローカルベースのどちらにするか決めましょう。クラウドベースはデータ紛失の可能性が低く、翻訳データを共有しやすいものの、利用するにはインターネット環境が必須など注意点もあります。一方、ローカルベースはインターネットがなくても利用できるものの、コンピューターが故障した場合にはデータが破損するリスクについても考えておかなければなりません。その他にも、費用や搭載されている機能、翻訳可能な言語などに着目して適切なツールを選ぶようにしましょう。
おすすめのCATツール12選
CATツールと一口でいってもさまざまな種類があります。翻訳したい文章の種類や、求めている機能によって適切なツールを選択しましょう。ここでは、12のおすすめのCATツールを紹介します。
SmartCAT
SmartCATはシンプルなユーザーインターフェース、質の高いAI 翻訳、スマートなリンギスト ソーシングを組み合わせて、あらゆるビジネスを多言語化するツールです。オンライン翻訳プラットフォームでは全てのプロジェクト、サプライヤー、支払いを1カ所で管理できます。
ポイント
- コンテンツを 280 以上の言語に翻訳できる
- DOCやPDF、JSONなど50種類以上のファイル形式に対応
- 翻訳プロジェクトを管理できるため複数人での翻訳にも利用できる
OmegaT
OmegaTはWindowsやmacOS、Linuxで動作可能なフリーの翻訳メモリアプリケーションです。また、マイクロソフトやWord、Excelなど30種類を超えるファイル形式に対応しています。搭載されている機能は豊富で翻訳メモリの生成や用語集の参照といった基本的な機能に加えて、異なる形式の複数ファイルを同時に翻訳する機能なども搭載されています。
ポイント
- 組み込みの綴り確認機能の搭載
- プロ翻訳者を対象にしたツール
- 対応するファイル形式は拡張子やカスタマイズなどを行える
Swordfish
Swordfishは翻訳のプロフェッショナルの要望に応えるかたちで開発されたツールです。また、ダウンロードすれば無料で利用できます。ただし、日本語対応していないので利用するためにはある程度の英語力が必要になります。
ポイント
- さまざまな種類のファイルに対応している
- プロ仕様のツール
- ダウンロードすれば利用できる
MateCat
MateCatは言語業界の専門家を主なターゲットとしたツールです。インタラクションはユーザーブラウザで実行できます。また、翻訳プロジェクトの管理をサポートする完全な機能セットが提供されています。このツールはオープンソースソフトウェアであるため、無料で利用可能です。ただし、日本語対応していないので利用するには英語力がある程度必要になります。
ポイント
- 言語業界の専門家を対象にしたAI主導翻訳ツール
- クライアントサーバのWebアプリケーション
- 機械翻訳のアウトソーシング、およびポストエディットが容易になる
Wordfast
Wordfastは企業や翻訳家、エンジニアなど幅広い職種に従事する人たちを対象に開発されたツールです。また、世界各国における100以上の大学や教育機関にフリーライセンスを提供するなど教育におけるサポートも行っています。ただし、日本語対応していないので利用するにはある程度の英語力が求められます。
ポイント
- WindowsやMac、Linuxなどで作動する
- 中国語と英語に対応
- 翻訳家にとって利用しやすいデザインになっている
Wordbee
Wordbeeは複数人での翻訳業務にも利用しやすいツールです。プロジェクトマネージャーはプロジェクトと作業を保持するFlexコンテナの作成のみで作業を行えます。新しいコンテンツがソースアプリケーションからコンテナにプッシュされるごとに翻訳を自動で開始します。ただし、日本語対応していないので利用するにはある程度の英語力が必要になります。
ポイント
- 無料トライアル期間があるから安心できる
- プロジェクトの関係者と同期した方法で作業を行える
- 請求書を自動で作成できる
Transifex
TransifexはWebベースのツールです。自動翻訳やWebサイト編集、META/ALTタグ翻訳、画像切り替えなどさまざまな機能が搭載されています。日本語対応はしていないものの、国内における認知度も比較的高く、口コミなどは日本語で読むこともできます。
ポイント
- Web上でチームをつくり、共同で翻訳を行える
- コミュニケーションツールが搭載されているため翻訳者と直接話せる
- 初期費用は無料
Trados Studio
Trados Studioは翻訳の生産性向上を目標にしたソフトウェアです。業界トップクラスのデスクトップとクラウドの翻訳支援ソフトウェアとなっているため、プロの翻訳家からも多く利用されています。また、品質チェックはワンクリックで行えて、用語の使用や単位、記号、数値、訳し忘れなどを確認できます。
ポイント
- ユーザー数は27万人以上、世界最大のプロの翻訳者コミュニティを形成している
- 翻訳メモリ機能が搭載されているため同じ翻訳をしなくてもよい
- 30日間の無料トライアル版がある
Fluency Now
Fluency Nowはクラウド型のツールですので、インターネット環境が整っていればどこでも利用可能です。ツールの利用者として翻訳家やビジネスパーソンなどさまざまな人が対象になっています。また、サポート機能が充実しており、チャットや ナレッジベースなどで対応してもらえます。
ポイント
- WindowsやOSX、Linuxで作動する
- 使いやすさに優れており、簡単に利用できる
- 自動でアップデートされるからアップデートの手間がかからない
Phrase
Phraseは最新の翻訳技術により、低価格、かつ高い品質での翻訳を実現します。そして、サポート対象となる言語は500以上。また、全ての製品情報を一か所で管理し、ターンアラウンドタイムを半分にすることもできます。
ポイント
- 無料トライアル期間がある
- 翻訳ワークフローの自動化とローカライゼーションプロジェクトの管理を容易に行える
- 多くの大手企業で導入されている
XTM Cloud
XTM Cloudはエンタープライズを対象にしたツールです。有名企業における導入実績も多数あります。翻訳メモリや用語集、翻訳支援ツールなどの基本機能が搭載されている他、プロジェクト管理ツールの内容も充実しています。また、機械翻訳との連携も行えるため、翻訳作業を円滑化できます。
ポイント
- 品質保証や翻訳品質評価の結果をプロジェクトやユーザ レコードとして保存できる
- Webブラウザのみで利用できるクラウド型
- 用語集をリアルタイムで更新し、共有できる
memoQ
memoQはクラウドベースのツールで、翻訳の品質も高いことで知られています。また、翻訳のプロセスはmemoQ上で自動的にシームレスに流れるため、翻訳業務を効率化できます。オンライン上で作業の共有も行えるため、複数人での翻訳作業にも最適です。
ポイント
- さまざまなファイル形式に対応している
- tradosなどのCATツールと互換性を有している
- 品質保証機能が搭載されているため品質の高い翻訳を実現できる
CATツールや翻訳ツールは自社にとって使いやすいものを選ぼう
CATツールを活用することで、自社における翻訳業務を効率的、かつミスなく行えるようになります。翻訳の作業効率が向上すれば、翻訳に充てていた時間を別の業務に充てられたり、従業員の負担軽減につなげたりできるでしょう。本記事で紹介したようにCATツールにはさまざまな種類があります。CATツールを導入する際は、それぞれのツールの特徴などを見比べて、自社に合ったツールを選ぶようにしてください。また、CATツールを導入することで訳抜けを回避できたり、訳語やスタイルを統一できたりするので翻訳の質が上がったと実感できることもあるでしょう。その他にも、自社に翻訳を資産として蓄積しやすくなるのもツールならではのメリットの一つです。
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