2つの拠点で生活を営む「デュアルライフ」は、政府による推進や働き方の多様化と新型コロナウィルスによる在宅勤務の増加などにより、幅広い層に浸透し始めているライフスタイルです。二拠点生活を成功させるには、事前の念入りな調査と準備が重要となります。本記事では、デュアルライフのメリット・デメリットやおすすめの場所、失敗しない始め方などを解説します。
デュアルライフ(二拠点生活)とは?
デュアルライフとは、2つの地域に拠点を持ち生活することで、そのようなライフスタイルを送る人をデュアラーと呼びます。たとえば平日は都会で仕事をして、週末は田舎で趣味や余暇を楽しむといった二拠点生活のことを指します。デュアルライフは、働き方改革の浸透により場所を問わずに働ける人が増えたことで、注目を浴びるようになりました。政府も地方創生の助けとなる重要な機会であることから、支援を強化しています。また新型コロナウィルスの影響で、都会とは違った居場所や生活に関心を持つ人が増えたことも、デュアルライフが幅広い年齢やビジネスパーソンに浸透している理由です。デュアルライフを送る目的は、趣味を楽しみたい、都会ではできないことを子どもに体験させたい、プレ移住を体験したいなど多種多様で、人によって楽しみ方が異なります。
デュアルライフのメリット
デュアルライフを送ることで、より自分らしい暮らしが実現でき、人生が豊かになるメリットを得られます。以下にその詳細を解説します。
生活にメリハリができる
仕事を中心とした日常生活を過ごす本宅と、休日をゆっくり過ごす自然あふれる別宅など、拠点によって過ごし方を変えるとオンとオフのメリハリができて、新たな生活リズムがうまれます。環境や人間関係がリセットされ、リフレッシュできるでしょう。
趣味やその土地ならではの楽しみを満喫できる
釣りやサーフィン、スキー、トレッキングといった自分の趣味に適した環境を拠点に選べば、思う存分にやりたい事を楽しめるでしょう。また、その土地の風習や文化、四季の食べ物など、短期旅行では得られない体験ができます。家族で過ごせば、親子の絆を深める機会も増えるでしょう。
新たなつながりがうまれる
デュアルライフでは、第二拠点に暮らす人との関わりも生じます。最近は、デュアルライフやお試し移住者を積極的に受け入れる自治体も少なくありません。農業や林業など地域産業を手伝って地域貢献に参加することで、都会では得られない新たな人脈を形成できます。新しいビジネスにつながる可能性もあるでしょう。
移住支援など公共サービスを利用できる
国の後押しもあって、地域によっては「移住支援金」などのサービスを活用できる場合があります。希望地を決めたら、これらのサービスの有無も確認しましょう。
万が一の備えになる
万が一都会の本宅が災害に遭い生活拠点を失ったとしても、もう一方を避難場所として利用できます。いざという時の頼みの場所があれば、大きな安心につながるでしょう。
デュアルライフのデメリット
一方でデュアルライフにはデメリットもあります。二拠点生活を検討しているなら、注意すべきことも理解しておきましょう。
移動費・維持費がかかる
デュアルライフは二拠点間を行き来するため、移動費と時間がかかります。また生活拠点が増える分の固定費や維持費が必要です。掃除や雑草対策などのメンテナンスや、地域によっては雪や寒さ対策の費用も必要となるでしょう。コストを抑えるには行き来しやすい場所を選ぶほか、サブスクを利用するなど固定費を節約する工夫をしましょう。
家族の理解を得なければならない
デュアルライフは費用や移動の労力がかかり、家族のスケジュール調整が必要になるため、家族としっかり話し合わねばなりません。家族全員が納得できるライフスタイルを実現するためにも、それぞれの希望も確認しながら家族が感じる不安を1つずつ解決していきましょう。
デュアルライフにおすすめ・人気の場所
続いて、快適なデュアルライフを送るためのおすすめの場所や人気のエリアを解説します。
現拠点から1〜2時間程度で移動できるアクセスのよい場所
デュアルライフの二拠点目は、本拠点との行き来が苦にならない地域を選びましょう。おおむね1~2時間程度で移動できる場所が望ましいといえます。移動時にかかるコストや交通手段も考慮して、選ぶとよいでしょう。
自然が豊かでレジャーを楽しめる場所
都会に住む人には、自然が豊かで趣味のレジャーを楽しめる場所が人気です。日常とは異なるリゾート性を感じられる軽井沢や長野県の八ヶ岳エリア、蓼科エリアは、大自然の中で登山やアクティビティを楽しめるエリアとして人気です。スーパーやレストラン、カフェなど生活に必要な施設も揃っており、四季の移ろいを感じながら質の良い暮らしを送るにはぴったりの場です。
海外でのデュアルライフも人気
デュアルライフの第二拠点は、国内に限った話ではありません。どこでもインターネットにつながり、Airbnbなどのシェアリングサービスが浸透してLCC網が拡大したことで、タイや東南アジアなど海外と日本のデュアルライフを楽しむ人が増えつつあります。海外での生活のハードルが下がったことで、経済的に余裕のあるリタイア層だけではなく、子供の教育のために海外で暮らしたい若い夫婦や経験値を高めたい・新しいことを始めたい若者などのデュアラーが増えています。
デュアラーに向いている人の特徴
デュアルライフは二拠点で生活し、移動に時間がかかることもあるため、土日にしっかりと休める、連休や長期休暇を取得しやすい人が向いているといえるでしょう。またリモートワークが可能な従業員や、エンジニア、デザイナー、ライターなど、PCとインターネット環境があれば仕事ができるフリーランスなども適しています。
デュアルライフに失敗する3つの原因
デュアルライフを失敗してしまう要因としては、情報収集不足や資金計画のミス、地域住民とうまく交流できないなどが挙げられます。詳しく解説します。
情報収集不足
事前に二拠点目の情報を集めしっかりと調べておかないと、「こんなはずじゃなかった」と後悔することもあるでしょう。大自然に憧れて選んだものの、近くにスーパーや病院がない、アクセスが不便などを後から知れば、そのうち足が遠のいてしまいます。二拠点目は「暮らす」ことを前提に、必要な施設や利便性などを必ずチェックしましょう。
資金計画が不十分
出費を甘く見積もってしまうことも、デュアルライフの失敗要因の1つです。二拠点目が田舎だとしても、都会と比べ家賃は安いものの物価は安くありません。また町内会費や雪かき・草むしりに使う道具の購入費、寒い地域ではガス代・電気代など、都会では想定できない出費がかさむこともあります。デュアルライフを成功させるには、資金計画をしっかり立てておくようにしましょう。
地域住民との交流不足
二拠点目を田舎にするなら、積極的に地元住民のコミュニティに溶け込むようにしましょう。お互いに協力し合い持ちつ持たれつの関係を築いておけば、トラブルが起きた際に助けてくれる可能性が高まります。「郷に入れば郷に従え」の意識で、その地のルールに従うとよいでしょう。
失敗しないデュアルライフの始め方7ステップ
ここからは、デュアルライフを失敗しないために何をどのような手順で進めればよいかを、段階別に解説します。
STEP1.デュアルライフをしたい目的を明確にする
最初に、デュアルライフを行う目的をはっきりさせておきましょう。「田舎でのんびり過ごしたい」「夏は釣り、冬はスノボを楽しむ」「家族で週末農業を営む」などなるべく具体的に決めると、場所選びがスムーズになります。やりたいことを挙げると、モチベーションも高まるでしょう。
STEP2.二拠点目に滞在する頻度や期間を検討する
続いて、二拠点目に滞在する頻度や期間を決めます。「子どもが就学するまで週末・連休だけ使う」「子どもの春・夏・冬休みやGWなど長期休暇のみ利用する」「二拠点目をメインにして平日も含め週4日は滞在する」など、頻度や期間もより具体的に決めましょう。仕事の状況や家族の成長も加味して設定するとよいでしょう。
STEP3.家族やパートナー・職場の理解を得る
家族やパートナーと一緒にデュアルライフを始めるならもちろん、単独で行動するにしても、それぞれの理解を得ておくことが重要です。家族とともに過ごす場合、皆の希望も叶うように配慮しましょう。また必要に応じて職場にも話しておき、仕事に支障がないようにしておきましょう。
STEP4.二拠点目の場所を検討する
いよいよ二拠点目の場所を検討する段階です。目的が明確であればおのずと候補は絞られ、その中でもアクセスの良さや生活の利便性、家族の希望が叶う場を選びましょう。行きたい場所のホームページや自治体による案内、実際にデュアルライフを送っている人の声などを参考にするとよいでしょう。
STEP5.初期費用・ランニングコストを計算する
場所がおおよそ決まったら、かかる費用を計算します。二拠点目の住まいは新築・中古を購入するほか、賃貸やシェアハウス、サブスク住宅の利用などが考えられます。賃貸などの場合、初期費用として敷金、礼金、家財道具等の購入費がかかります。ランニングコストは家賃や水道光熱費等、いわゆる生活費を算出しましょう。住む地域ややりたいことによって、雪や獣害対策費用、農機の手入れ・燃料代などがかかるため、忘れないで計上しましょう。
また、地方自治体によっては「移住支援制度」を利用できる場合があります。補助金や空き家の紹介、移住コンシェルジュの活用など使えるサービスがあれば、コスト削減につながります。また東京23区に在住または通勤している人で、東京圏外へ移住し起業や就業等をはじめる際には、「地方創生移住支援事業」を利用できる可能性があります。ただし両者とも条件によっては適用されない可能性もあるため、事前に各地方自治体や内閣府のサイトで詳細を確認しておきましょう。
STEP6.シェアハウスや民泊など短期間で二拠点生活を試す
実際にデュアルライフを始める前に、シェアハウスや民泊などを利用して短期間のトライアルを行うことをおすすめします。事前に考えていたことと現実は異なることも多く、トライアルでそのギャップや不都合な点などをチェックしましょう。
STEP7.本格的に二拠点生活を始める
トライアルを経て問題がなければ、いよいよデュアルライフのスタートです。地域住民との交流も楽しみながら、必要ならば自治体の各種支援を活用して、理想の生活を実現させましょう。
本格的なデュアルライフの前に実家で二拠点生活を始めるのもおすすめ
デュアルライフは二拠点で生活を営みながら、理想の暮らしを実現するライフスタイルです。働き方やワークライフバランスの多様化に加え、新型コロナウィルスの影響による在宅勤務の増加もあって、幅広い世代で実践する人が増えています。目的は人によりさまざまですが、デュアルライフを失敗する要因としては情報不足や甘い資金計画などが挙げられるため、事前の準備やリサーチが重要です。実際にデュアルライフを始める前に民泊やシェアハウスを利用して、試泊しながら二拠点生活の現実を体験するのもよいでしょう。また、たとえば実家を二拠点目に設定し、生活にどのくらいのお金がかかり、どんな問題が起きるかといった課題を探るのもおすすめです。デュアルライフを成功させるなら、事前にしっかりと調査・準備を行い、トライアルの実施をぜひご検討ください。