最近では、帳票の作成や管理をシステム化する企業が増えています。これらを電子上で行うようにすれば、作成や配信、管理など、手作業で行っていた業務の負担を省けます。そこで本記事では、電子帳票システムの概要を押さえた上で、電子帳票システムを導入するメリットとデメリットについて解説していきます。本記事の最後には、17のおすすめの電子帳票システムを紹介します。
電子帳票システムとは?
電子帳票システムは、請求書や出納表などといった帳票の電子化を行うシステムのことです。一つのシステムで各種帳票の作成や配信、管理などを行えるため、帳票に関するさまざまな業務の手間を省けます。ただし、帳票類を電子データで保管するには電子帳簿保存法の電子データの保存要件を満たさなければなりません。電子帳票システムには各種保存要件を満たした製品も多くありますので、心配な方は保存要件を満たした製品を選ぶとよいでしょう。
電子帳票システムの主な5つの機能
電子帳票システムには帳票の作成や管理をサポートする機能が搭載されています。システムによって搭載機能は異なりますが、主な5つの機能について詳しく解説していきます。
帳票作成
請求書や見積書などといった各種帳票をパソコンで作成できる機能です。連携している業務システムから必要なデータの抽出を行い、自社好みのフォーマットやレイアウトでの帳票の作成もできます。作成した帳票は従業員や取引先とも共有できるため、郵送したり、個別に送信したりといった手間を省けます。
帳票管理
紙での帳票管理には保管スペースの確保や紛失防止の対策などが必要です。帳票を電子データとして管理できれば、これらの作業は必要ありません。また、作成や送付をした帳票を電子データとして管理すれば、必要な帳票にアクセスしやすくなります。
帳票配信
紙の帳票を取引先に送る場合、郵送やFAXなどで送ることが一般的です。一方、電子帳票システムは帳票を電子データとして作成、および管理を行うため、紙の帳票よりも多くの方法で送れるようになります。たとえば、ダウンロードのページに移行するURLを記載したメールを送ったり、メールに帳票データを添付したりする方法があります。その他にも、郵送代行サービス、クラウド型でのFAX送信サービスなどを提供しているシステムもあります。
タイムスタンプ
電子帳簿保存法におけるタイムスタンプとは画像データに付与された時刻などの情報で、時刻認証局が付与するデータのことです。ある時刻から内容の変更などがないことを証明する重要な情報となります。電子帳票システムにはタイムスタンプの付与に対応したものもあるため、システム内でタイムスタンプについても完結できます。
セキュリティ
電子帳票システムの多くに強固なセキュリティ対策機能が搭載されています。部署や役職別に管理権限を付与する機能や操作ログを記録できる機能など、大切な情報の漏えいを防ぐための機能が搭載されています。また、電子帳票システムの中にはデータを安全に管理する機能を備えるものもあります。
電子帳票システムを導入するメリット
帳票に関わる業務を全体的に効率化できる電子帳票システムですが、導入することで具体的にどのようなメリットを得られるのでしょうか。電子帳票システムを導入するメリットとして以下の3つが挙げられます。
- ペーパーレス化によるコスト削減
- 帳票管理・作成の効率化
- セキュリティ対策にもつながる
それぞれについて詳しく解説していきます。
メリット1.ペーパーレス化によるコスト削減
電子帳票システムを導入することで、帳票を紙に印刷する必要がなくなるため社内のペーパーレス化を実現できます。A4用紙の白黒プリントは約3〜5円のコストがかかります。印刷にかかっているコストは年単位で見ると、かなりの額になっているはずです。加えて、帳票の電子化によって印刷だけでなく、郵便にかかっていた費用や労力を削減できるでしょう。
メリット2.帳票管理・作成の効率化
ほとんどの企業において帳票の作成はクラウドサービスや自社の業務システムで算出されたデータに従い、Excelなどで作業を行っていると見受けられます。データ量や帳票の種類が多いと、レイアウトも複数のパターンになるため、全てを作成し終えるには時間も労力も必要です。電子帳票システムを導入することでこうした作業の負担を大きく軽減できます。また、帳票管理もシステム上で行うことで、必要な帳票にすぐにアクセスしたり、帳票をファイリングしたりする手間を省けます。
メリット3.セキュリティ対策にもつながる
前述のように、電子帳票システムには不正アクセスを防ぐための機能が多く搭載されています。そのため、第3者に内容を勝手に見られたり、変更されたりといったことも防ぎやすくなります。また、紙の帳票は紛失などのリスクもありますが、帳票のやりとりをシステム上で行えば紛失することも基本的にありません。
電子帳票システムを導入する際の注意点やデメリット
電子帳票システムは前述のように優れたシステムではあるものの、システムを導入する際に注意点やデメリットもあります。電子帳票システムを導入する際の注意点やデメリットとして、以下の3つが挙げられます。
- 初期費用・ランニングコストがかかる
- システムダウンや倒産でデータが消去される
- 取引先の理解が得られない可能性がある
それぞれについて詳しく解説していきます。
デメリット1.初期費用・ランニングコストがかかる
電子帳票システムの導入には初期費用がかかります。そのため、新しいシステムを導入するのにかかる費用の捻出が難しい企業では、導入が難しくなりがちです。電子帳票システムを中長期的に使い続けることで、初期投資分を回収できるかも考える必要があります。また、導入後はランニングコストもかかりますので、コスト以上にメリットを得られるか見極めなければなりません。
デメリット2.システムダウンや倒産でデータが消去される
電子帳票システムには保管しているデータが消去されてしまうリスクもあります。たとえば、運用しているクラウド業者が倒産した場合や災害などでシステムがダウンした場合には、保存していたデータが消えることもあるので注意が必要です。また、システムがダウンすると、データが復旧するまでアクセスできなくなります。
デメリット3.取引先の理解が得られない可能性がある
取引先によっては帳票の電子化にセキュリティ面などから不安を感じることもあります。また、自社で電子帳票システムを導入していない場合、自社における業務や手間が増大すると懸念されることもあります。取引先からの理解が得られなければ、帳票の電子化は難しくなるでしょう。
電子帳票システムを導入する際のポイント
電子帳票システムのポイントを押さえて導入することで、導入後の後悔を回避しやすくなります。帳票システムを導入する際のポイントは以下の3つです。
- 電子帳票システム機能のうち何を重視するか明確にする
- 電帳法・インボイス制度に対応できているものを選ぶ
- データ処理速度に問題がなくストレスなく使用できるものを導入する
それぞれについて詳しく解説していきます。
ポイント1.電子帳票システム機能のうち何を重視するか明確にする
電子帳票システムと一口でいっても、各システムによって搭載機能は異なります。多機能の電子帳票システムが優れていると言い切ることはできないものの、機能が豊富であればあるほど業務を効率化できるでしょう。ただし、機能の充実度に比例して値段が割高になる傾向にあります。電子帳票システムを無駄なく利用するためには、自社に必要な機能を洗い出し、必要な機能が搭載されたものを選ぶことをおすすめします。
ポイント2.電帳法・インボイス制度に対応できているものを選ぶ
2022年1月に施行された改正電子帳簿保存法に対応している電子帳票システムも多くあります。こうしたシステムには取引先や金額などで検索できる機能や、タイムスタンプ機能などが搭載されています。また、2023年10月のインボイス制度の施行により、事業者は所定の記載要件を満たしたインボイスを発行しなければならなくなります。インボイス制度にも対応したシステムであれば、導入したシステムを快適に使えます。
ポイント3.データ処理速度に問題がなくストレスなく使用できるものを導入する
帳票システムは日常的に利用するものですので、データ処理速度に問題がないなどノンストレスで利用できるかどうかも重要なポイントになります。データ処理速度に時間がかかると、システムを利用しているにもかかわらず帳票の作成業務に思いのほか時間がかかるので注意が必要です。
おすすめの電子帳票システム17選比較紹介
電子帳票システムにはさまざまな製品があるため、どの製品がよいのか悩まれている方も多いのでがないでしょうか。そこでここでは、17のおすすめの電子帳票システムを紹介します。
楽楽明細
楽楽明細は大手企業を含む5000社以上の導入実績があります。帳票データのCSV、もしくはPDFを楽楽明細にアップロードすれば、Web、メール添付、郵送、FAXのいずれかで発行先に合わせて自動で割り振り発行できます。
ポイント
- 管理画面がシンプルで使いやすい
- 電子帳簿保存法とインボイス制度に対応している
freee 会計
freee 会計は個人事業主から中規模法人までに対応した会計システムです。請求書や決算書などの作成を行える他、労務管理も行えます。その他にも、支払管理や振込ファイルの自動作成などにも対応しています。
ポイント
- 経費レポート作成や分析を簡単に行える
- 電子帳簿保存法に完全対応している
MakeLeaps
MakeLeapsは初期費用0円で利用可能な請求業務をサポートするシステムです。クラウド上で見積書、発注書、納品書、検収書などの書類を作成できる他、送付は無料のワンクリックでメール、もしくは郵送代行(1通 148円/税抜)で行えます。
ポイント
- 電子帳簿保存法とインボイス制度に対応している
- 30日間、全ての機能を無料で試せる
CLOVA OCR
CLOVA OCRはあらゆる文書や画像、PDFの文字情報の読み取りを行い、スピーディーにデータ化する文字認識サービスです。RPA連携を行うことで業務プロセスの効率化を実現できる他、紙書類の保管コストやリソースの削減を実現できます。
ポイント
- 30日間の無料トライアル期間がある
- 汚れた紙やシワのある紙の読み取りも可能
FNX e-帳票FAXサービス
FNX e-帳票FAXサービスはクラウドFAXによって帳票のFAX業務の負担や経費削減を実現できるシステムです。発注書や納期回答書などの帳票を自動でFAX送信できるサービスとなっています。クラウド型のためFAXサーバ構築の他、モデムやFAX回線の保有は必要ありません。
ポイント
- サポートは24時間365日受けられる
- 料金形態は初期費用不要・従量課金制のため無駄がない
BtoBプラットフォーム請求書
BtoBプラットフォーム請求書は請求書の受取と発行のいずれにも対応しています。また、現在使っている会計システムや販売管理システムと連携を行い、請求データを取り込み一括処理することも可能です。
ポイント
- 請求書の作成、および受領業務を最大で90%削減できる
- 電子帳簿保存法・インボイス制度に対応している
SkyPDF ペーパーレス/電子サイン ソリューション
SkyPDF ペーパーレス/電子サイン ソリューションは紙が介在するさまざまな業務をPDFに替えられるシステムです。手書きの文字を手書き文字認識機能でテキストデータに変換する機能や改ざん検知機能などが搭載されています。
ポイント
- 導入前に訪問、もしくはオンラインで製品紹介やデモンストレーションをしてもらえる
- PDF基盤で、複数の既存システムとの連携が可能
伝票@Tovas
伝票@Tovasを導入すれば、帳票生成から配信までを自動化できます。データをアップロードすると帳票生成から仕分け、相手先ごとの配信まで自動で行ってくれます。
ポイント
- 通知メールとマネージャー機能で送信エラーを確認できる
- クラウド型のため機器の購入や運用の必要がない他、申し込みしてすぐ利用できる
OPROARTS
OPROARTSは帳票のクラウド化によって紙業務の時間と手間を削減できるシステムです。帳票のテンプレートは好みに合わせて利用でき、雛形となる帳票テンプレートをゼロから作成できる他、現在使っている帳票を取り込んで作成することもできます。
ポイント
- 3000行のテキストデータ(698KB)は1ページあたり0.02秒で出力できる
- お申し込み月の翌月末までの無料トライアル版を利用できる
Concur Invoice
Concur Invoiceを活用することで、請求書業務のDX化を実現できます。紙やPDFの請求書を受け取った際はAI-OCRでの自動読取や、受取入力業務自体をBPOで代行することも可能です。
ポイント
- 請求書の書式に関わらずまとめてモバイル電子承認できる
- 電子帳簿保存法とインボイス制度に対応
AUTO帳票EX
AUTO帳票EXはあらゆるサービスを結べる自動帳票配信サービスです。テキストファイル、イメージファイルをアップロードすることで、指定の宛先にFAX、メール、Webフォームが送信されます。
ポイント
- 基幹系システムと連携を容易に行えるため大規模な開発は必要ない
- テストアカウントでAUTO帳票EXを無料でお試し利用できる
invoiceAgent
invoiceAgentは自社に最適な帳票を変えることなく、他社との取引を最適化できるシステムです。帳票のフォーマット、やり取りの手段に関わらず、1つのプラットフォームに集約できます。業務や部門に限定されることなく、拡張しながら帳票の電子化を実現できます。
ポイント
- 電子帳簿保存法とインボイス制度に対応している
- 商取引における各種契約を電子化できる
sweeep Box
sweeep Boxを活用すれば、書類をアップロードするだけでAIが多くの作業を代替してくれます。また、書類が添付されたメールをsweeep Boxで受け取れば、書類は自動でシステム上に保管されるため、書類受け取りのための出社なども不要になります。
ポイント
- 検索に必要なタグをOCRを使って自動でつけてくれるため、書類のアクセスは容易になる
- 電子帳簿保存法に対応している
クラウドサイン
クラウドサインは紙と印鑑をクラウドに置き換え、契約作業のオンラインのみでの完結を実現します。国内における大手企業の導入実績も豊富にあるため、利用経験のある取引先も多いはずです。また、100以上のサービスと連携しているため、業務にすぐに導入できます。
ポイント
- 導入企業は130万社を超えている
- 弁護士ドットコムによる電子署名・タイムスタンプで非改ざん性を担保できる
快速サーチャーGX
快速サーチャーGXを活用すれば、大量に出力されるさまざまな帳票の一元管理を実現し、Webブラウザで閲覧できるようになります。また、スピーディーな検索を得意としているため、必要なデータにすぐにアクセスできる点も特長です。帳票登録時には自動で通知メールが配信されるため安心感もあります。
ポイント
- 電子帳簿保存法に対応している
- マルチテナント機能を活用すれば複数の企業、組織の帳票を管理できる
活文 Report Manager
活文 Report Managerはさまざまな帳票の保存や管理を自動化し、データ活用を容易にする電子帳票システムです。帳票が出力された時点で自動転送により保管庫に入れたり、転送した帳票を種類ごとに自動で分類したりできます。また、タブレットにも対応しているため、場所を問わずに帳票の確認などを行えます。
ポイント
- 電子帳簿保存法の法的要件認証を取得している
- 帳票はあらかじめ設定した保管期限をもとに自動で廃棄できる
e-image
e-imageは充実した機能が特長の電子帳票システムで、帳簿業務の負担を大きく軽減できます。基本機能の他、帳票定義機能や閲覧機能、メール一括送信機能なども搭載しています。また、ログ管理機能が搭載されているため、不正アクセスにもすぐに気付けるはずです。
ポイント
- 電子帳簿保存法に対応している
- 利用時に不明点があればコールセンターに問い合わせできる
自社にあった電子帳票システムを採用しよう
業務の効率化や働き方改革を実現したい企業には電子帳票システムの活用がおすすめです。電子帳票システムを導入することで、帳票をパソコンや手書きで作成したり、作成後に印刷、郵送を行ったりする手間が省けます。電子帳票システムは本記事で見たようにさまざまな種類がありますので、自社に合ったものを選びましょう。自社の業務において必要な機能を洗い出し、複数の電子帳票システムを比較してみることで、自社に合ったものが見つかるはずです。