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働き方改革とは?詳しい改正内容と推進によって変わる7つのこと

最近よく耳にするようになった「働き方改革」。その文字の通り、働き方を変えていくものだとは分かりますが、働き方改革が推進されることによって、実際にどのような変化が生じるのかご存知でしょうか。まだまだ詳しく知らない方が多いのではないでしょうか。本記事では、働き方改革についての詳細をご紹介します。目指していることや実施の背景、働き方改革によってどう変わるのかをまとめてお伝えするので、記事を読み終わるころには、働き方改革についての基本的な知識をつけられているはずです。

働き方改革とは

働き方改革は、総理が議長となり、労働界と産業界のトップと有識者が集まった「働き方改革実現会議」にて、「非正規雇用の処遇改善」「賃金引上げと労働生産性向上」「長時間労働の是正」「柔軟な働き方がしやすい環境整備」など9つの分野について、具体的な方向性を示すための議論が行なわれました。その成果として「働き方改革実行計画」が2017年3月28日にまとめられており、その実現に向けたロードマップが示されています。

また、働き方改革実現会議が提出した「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(働き方改革関連法)」が2018年6月29日に可決・成立し、2019年4月から順次施行されました。この法律は、「長時間労働の是正」、「正規・非正規の不合理な処遇差の解消」「多様な働き方の実現」という3つの柱から成っていることが特徴です。

そんな働き方改革は、働く人々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で「選択」できるようにするための改革であるとされています。では、働き方改革の推進にはどのような背景があるのでしょうか。

働き方改革の背景

現在日本は、「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」や「育児や介護との両立など、働く方々のニーズの多様化」などの課題に直面しています。

2013年の内閣府の発表によると、現状のまま推移した場合、100年後の人口は現在の3分の1まで急減するといわれています。人口が減少することで労働人口も減り、労働力不足に陥ります。労働力不足を解消するには、働き手を増やすこと・労働生産性を向上すること・出生率を向上することなどといったアプローチが必要です。

上記のような課題に対応するためには、投資やイノベーションによる生産力を向上するとともに、就業機会の拡大や、意欲・能力を存分に発揮できる環境作りが必要不可欠といえるでしょう。

このような背景から働き方改革が推進されており、課題解決のために動いているというわけです。

働き方改革で目指していること

働き方改革では、人々が直面している個々の事情に応じて多様な働き方を選択できる社会の実現することで、成長と分配の好循環を構築すること。そして、ひとりひとりがよりよい将来の展望を持てることを目指しています。

労働環境の改善や多様化

個々の事情に応じて働き方を選べる社会を多方面から実現するため、長時間労働の是正や多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保などの措置を講じるとしています。

人手不足の解消

また、日本の経済を支える中小企業・小規模事業者は、人手不足という課題に直面しています。日本の雇用の7割を担っている中小企業・小規模事業者が着実に働き方改革を実施することで、魅力ある職場を作り、人手不足の解消にも繋げられると考えられています。「魅力ある職場づくり」→「人材の確保」→「業績の向上」→「利益増」の好循環を、働き方改革によって作ることが可能になるとされており、そのサイクルを作ることを目指しているのです。

働き方改革の実現に向けた7つの取り組み

続いて、働き方改革を実現するために取り組みをご紹介します。

1.長時間労働の是正

まずは、「長時間労働の是正」です。長時間労働を無くし、年次有給休暇を取得しやすくすることによって、働きすぎを防ぎながら、ワークライフバランスと多様で柔軟な働き方を実現することを目指しています。

また、働きすぎを防ぐことで健康を守る措置に繋げることも目的としています。自律的で創造的な働き方を望む人々のために新たな制度を作ることも定めています。

具体的な改革内容は以下です。

さらに、生産性を向上し、長時間労働を無くすためには、上記の見直しはもちろんのこと、職場の管理職の意識改革や非効率的な業務プロセスの見直し、取引慣行の改善も必要です。厚生労働省は、これらの取り組みがより多くの職場へ浸透していくよう、周知・啓発支援・助成を行なっていくと述べています。

2.雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保

続いては、「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」です。無期雇用フルタイム労働者である正規雇用労働者と、パートタイム労働者や有期雇用労働者派遣労働者といった非正規雇用労働者との不合理な待遇の差を無くすことを改正の目的としています。どのような職や働き方を選んでも、待遇に納得して働き続けられるように整えることで、多様かつ柔軟な働き方を選択しやすくなることが見込まれています。

具体的には、以下の3つを軸に改正が進められています。

不合理な待遇差をなくすための規定の整備では、同一企業内において、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間で、基本給や賞与などの待遇面で不条理な差を設けることが禁止されます。現状は、同一労働同一賃金ガイドラインを策定し、不条理な待遇差を明確に示しており、改正法の施行時期に合わせて適用される予定です。

労働者に対する待遇に関する説明義務の強化では、非正規雇用労働者が自身の待遇について説明を求められるようになるというもの。事業主は、正社員との待遇差の内容や理由の説明を求められた場合、説明する義務が生じます。

行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備では、都道府県労働局において、無料・非公開の紛争解決手続きを行なえるようになります。「均衡待遇」や「待遇差の内容・理由」における説明についても、行政ADRの対象となります。

3.柔軟に働き方がしやすい環境整備

続いては、「柔軟な働き方がしやすい環境整備」です。月曜日から金曜日、決まった場所へ行き決まった時間に働く働き方が一般的ですが、働き方改革ではこの点も改正を推進しています。柔軟な働き方をするためには、環境整備が必要不可欠。テレワークや副業・兼業を取り入れた、環境整備を促進させています。

具体的には上記のような取り組みを通して改革が行なわれます。雇用型テレワークの普及促進においては、相談窓口の設置・運営や助成金等による導入支援、適正な労務管理のためのガイドラインの周知などが行なわれる予定です。

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4.ダイバーシティの推進

続いては、「ダイバーシティの推進」です。多様かつ柔軟な働き方を目指すには、多様な人材の活躍を促進することが必要です。働き方改革では、ダイバーシティの推進を通して、多様な働き方ができる社会を目指します。

具体的には、6つの側面からダイバーシティの推進を行ないます。

女性の活躍推進

女性の活躍推進に関しては、以下のような内容で、女性がより活躍できる社会作りを目指しています。

若者の支援

若者の支援に関しては、以下の3つがポイントとなっています。

上記のような形で、正社員として働きたい人々の支援が行なわれる予定です。

高齢者の支援

高齢者も、希望に応じて働き続けられるよう、職場環境を整えることが目指されています。

さらに、障害者も活躍できる社会を目指し、一人ひとりの状況に応じた就労環境の整備が推進されていることも特徴です。

5.賃金引き上げ、労働生産性向上

続いては、「賃金引き上げ、労働生産性向上」です。働き方改革では、「年率3%程度を目途として、名目GDP成長率にも配慮しつつ引き上げていく。これにより、全国加重平均が1000円になることを目指す。このような最低賃金の引き上げに向けて、中小企業、小規模事業者の生産性向上等のための支援や取引条件の改善を図る」と定められています。賃金を引き上げることで消費が増え、日本経済が潤うことが予想されています。ただし、労働時間を減らしつつ賃金を引き上げる必要があるため、労働生産性を同時に向上しなくてはなりません。

そのために、中小企業・小規模事業者の業務の改善を国が支援し、従業員の賃金引上げを図る「業務改善助成金」制度や、賃金引上げのための業務改善に関する相談支援や生活衛生関係営業等の収益力向上・生産性向上支援を行なう「働き方改革推進支援センター」といった支援の形を充実させています。

6.再就職支援、人材育成

続いては、「再就職支援、人材育成」です。

これらの施策を通して、働きたい人々がより多く働く機会を得られる社会を目指しています。

7.ハラスメント防止対策

最後が、「ハラスメント防止対策」です。

上記の施策を通して、多様な人材が働きやすい環境を整備することを目指しています。

働き方改革で知っておきたい3つのポイント

続いて、働き方改革の中でも特に知っておきたい3つのポイントをおさらいしましょう。

ポイント1.労働基準法における労働時間の大幅な見直しについて

働き方改革において大きく変わるのが、労働時間についてです。これまでは、法律によって労働時間の上限は定められていませんでしたが、今回の改革法案成立によって、上限の規制が設定されました。この改正により、長時間労働への抑止力がより強まったといえます。1947年に制定された「労働基準法」において、初めての大改革です。

新たに定められた残業時間の上限は、原則として月45時間・年360時間。臨時的な特別の事情がなければこれを超えることはできないと決められています。

また、特別な事情があり労使が合意する場合でも、年に720時間以内・複数月平均80時間以内・月100時間未満を超えることはできません。原則である月45時間を超えられるのは年間6ヵ月までと定められているので、長時間労働をより具体的に防ぐことが可能となるでしょう。

さらに、フレックスタイム制が拡充されることも大きなポイントです。これまでは、労働時間の清算期間は1ヵ月とされていました。そのため、労働時間を超えた月は割増賃金を払う必要があり、反対に労働時間に足りていない分は欠勤扱いとなっていたのです。しかし、改正後は労働時間の清算期間が3ヵ月となるので、例えば、6月に働いた分を8月の休んだ分に振り替えることが可能となります。子どもの夏休みや冬休み期間に合わせ、6月に多く働き、8月は労働時間を抑えるといったことができるようになるのです。子育てや介護などの生活上のニーズに合わせて、より柔軟な働き方の選択が叶います。

ポイント2.テレワークの推進について

新型コロナウイルス感染症によってテレワークの導入が急激に進みましたが、働き方改革でもテレワークが推進されています。テレワークとはICTを利用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方のことをいい、ワークライフバランスの実現 、人口減少時代における労働力人口の確保、地域の活性化に役立ってくれると期待されている方法です。

そんなテレワークには、「雇用型テレワーク」と「自営型テレワーク」という2種類があります。雇用型テレワークは、企業で働く従業員にオフィス外での勤務を認める方法で、通勤時間を削減できたり、育児・介護と仕事との両立がしやすくなったりというメリットがあります。対して自営型テレワークは、従業員としてではなく委託契約などで仕事を受注し、自宅やコワーキングスペースなどで働く形のことを指します。働く人が時間と場所を選んで勤務できるテレワークが推進されることで、より柔軟な仕事との向き合い方を実現できるでしょう。

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ポイント3.副業・兼業の推進について

厚生労働省は、「働き方改革実行計画」を踏まえ、副業・兼業の推進も図っています。令和2年9月には「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を策定し、企業も働く方も安心して副業・兼業を行うことができるようルールを明確化しています。今後は、一つの企業に属するだけではなく、よりスキルアップを目指したりキャリアを磨いたりするために、副業を活用する人が増えていくことが予想されます。「副業・兼業の促進に関するガイドライン」に沿って、自身のキャリアを改めて考え直してもいいかもしれません。

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おわりに

「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」や「育児や介護との両立など、働く方々のニーズの多様化」といった現在の日本が抱える課題に対応する策として推進されている「働き方改革」。労働時間の見直しを中心に、多方面から働き方を変えるための施策が進んでいます。とはいえ、働き方を変えることはそう簡単ではありません。残業時間は形式上減らしても、効率が上がっていなければ従業員が圧迫されるだけです。持ち帰って会社の目が届かないところで残業をするということも起こり得るでしょう。自社にはどんなところが足りないのか、自身の働き方には何が足りないのかをしっかり把握したうえで、働き方改革の施策を上手に活用することが大切です。働き方改革における正しい知識をつけ、ご自身の働き方や会社の運営に役立てていただけますと幸いです。

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