市場の変化がますます早まっている現在、企業は所有する経営資源(リソース)をいかに有効活用するかが生命線になります。そこで注目されているのが、ヒト・モノ・カネ・情報の活用、連携を見える化し、統合管理するERPです。本記事では、ERPの導入メリットや選定ポイントを分かりやすく解説しています。ぜひ参考にしてください。
ERP(基幹システム)とは?
ERPはEnterprise Resource Planning(企業のリソース計画)の頭字語で、コンピュータ・テクノロジーを駆使して「ヒト・モノ・カネ・情報」を統合的に管理するシステムです。従来各部署が独自のシステムで行なっていた生産管理、人事管理などを1つのシステム(ERP)に統合し、部署間の連携の強化・業務の効率化を図ります。
CRMとの違い
CRMは、Customer Relationship Management(顧客関係管理)の略です。「顧客関係管理」は、単に「顧客管理」というより、お客様第一主義のニュアンスが強くなっています。企業の利益を最大化するには、顧客と良好な関係を築くことがもっとも重要だとする経営思想に基づく管理手法です。一般的には、CRMというと顧客関係管理システムがパッケージ化されたITツールを指します。
マーケティング業界で導入が進んでいるCRMツール。しかしいざ導入しようと思っても、種類が多すぎて選びきれないと悩んでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか。本記事では、CRMツールの意味やメリット、比較時のポイント、特徴別のサービスを解説[…]
SFAとの違い
SFAは、Sales Force Automation(営業行為の自動化)の略で、電話営業やアポ取りなどをデジタル技術で省力化、効率化するシステムです。「営業支援ツール」と訳され、営業に関わるルーチンワークの省力化や、コンピュータを利用した営業分析などを行ないます。
SFAツールとは、企業の営業活動を可視化して効率化を図り、売上・利益を最大化させるための営業支援システムのことです。 昨今は多種多様なツールがリリースされており、営業マンが多い大企業向けのものだけではなく、小規模企業でも使いやすいツー[…]
ERPを導入する3つのメリット
メリット1.情報を一元管理できる
ERPを導入することで、生産、営業、販売などの各部署に分散していた情報・データを「統合データベース」で一元管理できます。一元管理によって、どこかの部署がある業務処理を実行すると同時に、関連データがすべて自動更新されます。部署間での情報のやり取りや、データの再入力などの作業が不要になるのがメリットです。人手を介する情報の聞き合わせ、データの加工が不要になると、他部署との連絡に気を遣ったり、時間を取られることがなくなります。さらに、二重登録や入力ミスなどのヒューマンエラーも解消されるでしょう。
メリット2.データに基づく経営判断ができる
ERPの統合データベースによって、ヒト・モノ・カネの流れが各部署を横断してリアルタイムに更新されるので、データに基づく的確な経営判断が可能です。意思決定の遅れによってビジネスチャンスを失うリスクも小さくなくなります。
メリット3.より重要な業務に集中しやすくなる
ERPを導入して部署間の情報のやり取りや加工に時間を取られなくなると、本来のコア業務に集中できます。データの整合性に疑念が生じて確認する、などの余計な手間も不要です。また、業務報告や申請・承認なども一括管理できるので、手続きや管理などの「内部統制」が楽になります。
ERP導入時に検討したい3つのこと
ERPは従来、大企業が導入するものというイメージでしたが、デジタル技術やクラウドサービスの発展によって、中堅企業、中小企業でも導入可能になり、導入例が増えてきました。ERP導入の際に検討したいのは「導入目的の明確化」「運用のしやすさ」「運用ルールの設定」の3点です。
1.導入目的を明確にする
自社の業種、規模はもちろん、解決すべき課題によってもERPに求める機能は異なります。例えば季節要因による繁忙・閑散の差が大きい企業では、シーズンに合わせたヒト・モノのリソース配分が大きな課題になります。このような自社の課題をまず明確にして、そのソリューションに適したERPを導入するすることが肝心です。「いつももめているのはどの部署間か」「どこでムリやムダが生じているか」「活用されていないデータにどんなものがあるか」など、自社の課題を具体的に洗い出す必要があります。
2.運用しやすいものを選ぶ
どんなに便利な機能が揃っているERPでも、社員が充分に使いこなせないツールでは意味がありません。自社社員のPCスキルやIТリテラシーに応じた、運用しやすいツールを選ぶことが重要です。どのツールを選ぶにしても、一定の教育期間と運用体制の整備が必要です。準備に多大の時間や労力を注がなくてもよいシンプルさ、直感的な操作性があるものを選びましょう。導入に際してのサービス提供会社からの教育や、運用中のサポートなども確認しておく必要があります。
3.運用のルールを明確にする
ERPによるデータの一元管理といっても、データ入力(更新)のタイミングがルール化され、周知されていないと、かえって混乱を招く場合があります。例えば、在庫データの更新を「受注時点」で行なうのか「配送時点」で行なうかのルールがあいまいだと、データ上は在庫があることになっているのに現場には品物がないということが生じかねません。また、企業のあらゆる情報が集約される統合データベースには、すべての社員がすべての情報にアクセスできるわけではありません。アクセス権限の付与や制限についても明確にルールを定めて周知させることが必要です。
ERPの比較ポイント
導入するERPを選定するための比較ポイントには、費用面、機能面、運用面などで、次のような5つのポイントがあります。
ポイント1.クラウド型かオンプレミス型か
ERPは、IТベンダーにシステム構築を依頼し、自社にサーバーを設置する「オンプレミス型」が中心でした。しかし、さまざまなクラウドサービスが開発される中で、ERPにも「クラウド型」が誕生し、多大な開発費用や設備費用をかけずに導入可能になりました。オンプレミス型は、自社業務に合わせたシステムを一から構築でき、カスタマイズも自由です。セキュリティも自社で管理でき、必要に応じて強化策を講じられます。その代わり初期費用や保守管理費用が大きくなるので、大企業や金融機関などに向くタイプです。クラウド型は、独自のシステム構築やハードウェアを必要としない、パッケージ化されたシステムです。自社に合わせたカスタマイズは可能ですが、オンプレミス型ほどの自由度はありません。初期投資が少ないので中小企業でも導入可能ですが、半レディーメイドのシステムなので、自社に合った製品を選ぶことが重要です。
ポイント2.導入目的に合ったものか
システム作りで要件定義から入るオンプレミス型では、導入目的は明確に意識されます。しかし、クラウド型の場合は、さまざまなタイプの製品から選択することになるので、導入目的を「具体的に」意識しておくことが大切です。一口に「ヒト・モノ・カネ・情報」の統合管理と言っても、業種によって、企業によって重点の置きどころが違います。解決すべき課題も会社それぞれです。例えば「販売部門と生産部門の連携が弱く、欠品や納期遅れがしばしば生じる」という課題があるなら、そのソリューションに適したシステム選びが最優先されます。ERPの中には、ある業界に特化したものや、会計と人事などある部署間の連携に焦点を合わせたものなど、多くの種類があります。「すべてのリソースの統合管理」にこだわらない選択も可能です。
ポイント3.必要な機能が揃っているか
クラウド型ERPは、製品によって機能が大きく異なるので、業種、事業規模に見合った機能が備わった製品を選ぶ必要があります。小売業のERPに「生産管理」の機能は必要ありませんが、製造業にとっては中核的な機能です。製造業では、自社の生産体制とマッチする使いやすい機能かどうかが、最重要の選択ポイントになります。デザインやソフトウェア開発の企業なら、契約単位のプロジェクト管理機能が重要な選定ポイントです。また、機能は多ければ多いほど良いわけではありません。機能が多い製品ほどサブスク代(月額料金)が高くなるので、不要な機能、使いこなせない機能が多いと、ムダなお金を払うことになります。製品に慣れるのにも時間がかかり、社員にERPに対する苦手意識が生じるかもしれません。
ポイント4.カスタマイズできるか
同じ業種でも会社によって業務フローは千差万別です。できるだけ自社の業務に合ったERPを選択したとしても、ある程度のカスタマイズは必要になります。どのくらいのカスタマイズが可能か、簡単にカスタマイズできるかは、重要な選択ポイントです。ERPの機能に合わせて多少業務フローを変更することも実際にはあります。しかし、それはあくまで些末な変更に留めるべきで、ERPの導入によって社内に混乱が生じるようでは本末転倒です。また、業務フローは将来変更される可能性があるので、導入後のカスタマイズの自由度・難易度も確認しておく必要があります。
ポイント5.サポートやセキュリティは十分か
導入時にどんな教育(レクチャー)があり、導入後にどんなサポートがあるかは、ERPの重要な選択ポイントです。せっかく良い機能があっても「使い方がよく分らないので、あまり使っていない」という社員が多いと、導入効果は得られません。ERPは「基幹システム」なので、万一トラブルが生じたときにサービス提供会社が迅速に対応してくれるかどうかは非常に重要です。セキュリティ対策を含めて、システム障害などのトラブル対応を導入前によく確認しておきましょう。
鉄板のおすすめERP
数あるERPの中から、定評と実績のある2つのクラウド型サービスをご紹介します。
クラウドERP ZAC
クラウドERP ZAC は、案件・プロジェクト単位で業務を行う企業向けに特化した、クラウド型ERPパッケージです。広告、デザイン、システム開発、コンサルタントなど、契約単位で仕事をする企業にマッチする機能を備えています。ZACを提供するのは株式会社オロ(本社 東京都)で、2019年8月のリリースから約2年間で750社の導入実績があります。ZACの特徴は、プロジェクト管理に原価管理、仕入れ管理、外注管理、工数管理、請求管理などを紐づけて一元管理できることです。それによってプロジェクトごとの収支を把握できます。また、受注見込の案件をデータに取り込むことで、確度の高い売上予測、利益予測が可能です。「経営モニタリング」機能があり、プロジェクトごとの収支を常にモニタリングし、異常値を検出したときはアラートで通知されます。「レポート」機能では、プロジェクト別、部門別の売上、費用、利益のレポートが随時出力され、的確な経営判断をサポートします。ZACの価格は、初期費用としてライセンスの購入費とコンサルタントによる導入支援のサポート費用が必要です。ライセンスは単価×利用人数で計算されますが、機能ごとのライセンス価格が設定されているので、利用者ごとに必用機能だけを割り振れます。運用中は月額で、保守管理費用がかかります。初期費用を抑えたい場合は、リースプラン、サブスクプランもあります。
ジョブマネ
ジョブマネは「日本の中小企業に徹底して寄う」をコンセプトにしたクラウド型ERPシステムです。IТツールが初めの社員でも使える直感的な操作性と導入しやすい低額料金を特徴としています。企業に最低限必要な機能を備えた「グループウェアプラン」とERPの諸機能(17機能)をオールインワンで利用できる「ビジネスプラン」があります。グループウェアプランは、スケジュール管理、経費精算、ワークフロー(稟議)、資料の共有などの機能を備えており、従業員100人まで会社は1社当たり月額1,000円の低料金です。ビジネスプランは、営業支援(SFA)、顧客関係管理(CRM)などを基幹システムに紐づけて一元管理できるオールインワンツールで、費用はユーザー1人当たり月額3,000円です。全社員向けにグループウェアプランを契約して、必要な社員にだけビジネスプランを割り当てられます。サポート体制としてはオンラインチャットがあり、ビジネスプランユーザーは平日10:00~17:00無料で利用できます。
ERPは導入目的をはっきりさせ、自社の業種や用途に合ったものを選ぼう
活用されないリソースが多いほど、企業の生産性は低下し、競争力が弱くなります。自社の業務や課題にあったERPを導入して、部門間のデータを統合管理するとともに、問題点や課題を可視化して迅速に対処しましょう。