近年、クラウド技術の進展によりメールの送受信やスケジュール管理、ドキュメントの作成などの業務をオンライン上で行うことが一般的になっています。Google Workspace(ワークスペース)は、Googleが提供するオンラインツールです。オンラインツールを活用することで、組織のコミュニケーション強化や生産性向上などの効果が期待されます。一方で、「Google Workspaceにはどういった機能があるのかを知りたい」「Gmail、G SuiteなどのGoogleのツールとの違いがわからない」などといった疑問をお持ちの方がいらっしゃるかもしれません。そこで本記事では、Google Workspace(ワークスペース)の概要や各アプリケーションの説明、活用事例、料金プランについてご紹介します。
Google Workspace(ワークスペース)とは?
Google Workspace(ワークスペース)とは、Googleが提供するクラウド型のビジネスツールです。Google Workspaceでは、ビジネスを実施するうえで必要とされる下記の機能が含まれています。
アプリ名 | 内容 |
Gmail | メールサービス |
Google Meet | ビデオ会議ツール |
Google カレンダー | スケジュール管理ツール |
Google Chat | チャットツール |
Googleドライブ | オンラインストレージサービス |
Googleドキュメント | 文書作成(ワープロ)ツール |
Googleスプレッドシート | 表計算ツール |
Google Keep | メモツール |
Googleフォーム | フォーム、アンケート作成ツール |
Googleサイト | Webサイト作成ツール |
Google Workspace(ワークスペース)とG Suiteの違い
Google Workspaceとは別に、G Suiteというキーワードを目にするかもしれません。G SuiteはGoogle Workspaceの前身に当たるサービスであり、2020年10月6日にG SuiteからGoogle Workspaceにブランド名称が変わりました。G SuiteからGoogle Workspaceへの主な変更点としては、下記のとおりです。
- ・最大利用人数が無制限から有限に
- ・ストレージの容量が有限に
- ・Gmail、Chat、Meetが一つの画面に統合
- ・料金プランの変更
Google Workspace(ワークスペース)でできること
Google Workspaceを用いると以下のことを行えます。
他メンバーの状況を把握しながら作業を進める
カレンダー機能により、他メンバーの予定を把握したり、会議の予定を設定し招待メールを自動送信したりすることが可能です。カメラが内蔵されているパソコンやスマートフォン、タブレットがあればGoogle Meetのアプリ経由でビデオ会議に参加できます。ビデオ会議では、メンバーの顔を見ながら、ファイルを共有することで、チームと作業状況を確認しながら作業を進められます。
1つのファイルを複数メンバーで共同編集
ドキュメント、スプレッドシート、スライドなどで作成されたファイルをパソコンやスマートフォン、タブレットを介して編集できます。社外のユーザーやチームメンバーと、1つのファイルに対してリアルタイムで同時編集できることが、Google Workspaceの大きな特徴です。共同編集者が編集中の内容を把握したり、コメント機能を用いて質問を残したり、チャット機能でコミュニケーションを取りながら作業できます。すべての編集内容は自動保存されるため、保存漏れの心配もありません。
ファイルをクラウド上で保存・共有
業務で使用するファイルは、クラウド上に保存され、パソコンやスマートフォン、タブレットからアクセスが可能です。また、他のメンバーにファイルの参照や共同編集、ダウンロードの権限を付与できるため、わざわざメールでファイルを添付して共有する必要がありません。ファイルを更新した際は自動的にドライブに保存されるため、利用者は常に最新版のファイルにアクセスできます。
Google Workspace(ワークスペース)の主なアプリケーション
Google Workspaceには、ビジネスで利用するためのアプリケーションが多く備わっています。主なアプリケーションについて詳しく説明します。
Gmail
GmailはGoogleが提供するメールサービスです。2019年10月時点で、全世界で15億人の月間のアクティブユーザーがいると言われています(*)。メールの作成、送信、受信などといったメールに関する基本機能だけでなく、重要なメールを整理・検索したり、インターネットに接続していなくてもメールの閲覧や下書きを作成したりもできます。GmailはGoogle Workspaceを利用せずに無料で利用可能ですが、その場合のドメイン名は「gmail.com」です。Google Workspaceを利用すると「会社名.com」や「会社名.co.jp」など独自ドメインを利用できます。
*参考:Google’s rocky path to email domination
Google Meet
Google MeetはGoogleが提供するビデオ会議のツールです。J.D. パワージャパン社が独自に実施した、「J.D. パワー 2020年Web会議システム顧客満足度」によると、「Zoom」「Cisco Webex Meetings」「Microsoft Teams」などを抑えて1位の評価を得ています。特にユーザーインターフェース、料金、製品機能の3つの分野で高い評価を得ているようです。パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットからの利用が可能であるため、いつでもどこでも外出先からビデオ会議に参加できます。
Google カレンダー
Googleカレンダーはスケジュール管理ツールです。予定を社内の他メンバーに共有できるのが特徴です。「タスク」という項目からTODOリストを記録できます。また、登録した予定にGoogle Meetのビデオ会議や文書ファイルを添付できます。そのため、資料を個別にメールで送付する必要がなく、会議参加者は会議案内を受け取ったタイミングで資料を確認できます。
Google Chat(チャット)
Google ChatはGoogleが提供するチャットツールです。1対1だけでなく複数人以上のメンバーと同時にテキストベースでのやりとりが可能です。スマートフォンにGoogle Chatのアプリをインストールすることで、移動中でもチャットでのやり取りができます。また、グループを作成すると任意の名前でチャットルームを作れるため、チームやプロジェクトなど特定の目的を持って会話できます。
Googleドライブ
GoogleドライブはGoogleが提供するオンラインストレージサービスです。文書ファイルだけでなく、動画、写真、音楽などさまざまな形式のファイルを保管できます。Windowsのパソコンをお使いの場合、Googleファイルストリーミングと呼ばれるサービスを使うことで、フォルダやファイルを管理するために使われている「エクスプローラー」経由でGoogleドライブに保管されているファイルにアクセスできます。
Google ドキュメント
GoogleドキュメントはMicrosoft Wordと同様の形で文書を作成できる、Googleが提供する文書作成(ワープロ)ツールです。Googleドキュメントは共同編集機能が存在し、一つのファイルに対して複数のユーザーが同時に編集できます。他メンバーの編集内容をリアルタイムで確認できます。Microsoft Wordとの互換性があるため、Googleドキュメントで作成したファイルをWordファイル(拡張子が.docとなっているファイル)に変換し、ダウンロードすることが可能です。反対に、Microsoft Wordで作成されたファイルをGoogleドキュメント上で開くこともできます。
Googleスプレッドシート
GoogleスプレッドシートはGoogleが提供する表計算ソフトです。Microsoft Excelと同様の形で使用できます。Googleドキュメントと同様に共同編集機能が存在します。Microsoft Excelとの互換性があるため、Googleスプレッドシートで作成したファイルをExcelファイル(拡張子が.xlsxとなっているファイル)に変換したり、Microsoft ExcelのファイルをGoogleスプレッドシート上に開いたりもできます。一方、フォント、グラフや罫線の種類はMicrosoft Excelのほうが豊富のため、より自由なレイアウトを望む場合は、Microsoft Excelを使用することをおすすめします。
Googleスライド
GoogleスライドはGoogleが提供するスライドショー作成ツールです。基本的にはMicrosoft Powerpointと同様の機能を有しており、互換性もあります。Googleスライドは他のGoogleのアプリケーションと同様、Webブラウザー上での動作になりますが、「プレゼンテーションを開始」というボタンを押すことでスライドショーを流せます。Microsoft Powerpointとの主な違いについては、GoogleスライドにGoogleドキュメントやGoogleスプレッドシートと同様に共同編集機能が備わっている点です。複数ユーザーが同時に一つのスライドショーのファイルを作成できます。一方、Microsoft Powerpointで作成したファイルの中に画像などのオブジェクトを入れている場合、場合によってはレイアウトが崩れて表示されることがあります。
Google Keep
Google KeepはGoogleが提供するメモサービスです。通常のテキストメモだけでなく、TODOリスト、音声、写真を追加できます。テキストメモを色分けしたり、ピン留めしたり、ラベルを張るなどしてメモを整理できます。また、Googleドキュメントと同様、共同編集機能が備わっています。Google Keepには、位置情報と連動したリマインダー機能があります。例えば、出張先に到着したと同時に、あらかじめ設定した出張先のタスクをリマインドしてもらうことが可能です。また、Google Keepで作成したメモは、ワンクリックでGoogleドキュメントに転記できるため、メモをそのままドキュメント化できます。
Google フォーム
GoogleフォームはGoogleが提供するフォーム作成ツールです。アンケート、問い合わせ、キャンペーンなどの申し込みフォームを簡単に作成できます。こちらのツールもGoogleドキュメントなどと同様に共同編集機能があります。テキスト入力欄、チェックボックス、ラジオボタンなどのパーツをマウス操作で組み合わせるだけで簡単にフォームを作成できます。一方で、フォームの背景を任意に画像に差し替えるなどといったことができないなど、シンプルなデザインでしか展開ができません。
Google サイト
GoogleサイトはGoogleが提供するホームページ作成ツールです。専門的な知識がなくても、基本的にマウス操作のみでホームページを作成できます。レスポンシブデザインにも対応しているため、作成したページはスマートフォンにアクセスした場合、スマートフォンの画面サイズに自動補正されます。社外公開向けのホームページや社内メンバーに情報を共有するためのサイトなど、さまざまな用途で活用できます。Googleサイトを使えば、それらのページを新たにサーバーを立てるなど、追加費用なく簡単に作成できるのが特長です。
Google Workspace(ワークスペース)のセキュリティについて
Google Workspaceは、厳格なプライバシー基準やセキュリティ基準に対応しているため、安心して利用できます。具体的には、ISO/IEC 27001(情報セキュリティ管理)、ISO/IEC 27017(クラウドセキュリティ)などのセキュリティ規格だけでなく、一般データ保護規則(GDPR)などのプライバシー基準に準拠しています。Googleはサイバー攻撃だけでなく、物理的な攻撃に対するセキュリティも充実しています。Google Workspace上で保管されたデータは、Googleのデータセンターに蓄積されます。Googleのデータセンター自体は、生体認証や電子カードなどを用いた安全保護対策が行われており、物理的な観点でもセキュリティが確保されているといえます。
Google Workspace(ワークスペース)の活用事例
リモートワークへの活用
2020年の新型コロナウイルスの流行以降、リモートワークが一般的になっています。しかし、メンバー同士のコミュニケーションが低下、生産性が減少するなどといった課題に直面している企業もあるようです。Google Meetを利用することで、顔を見ながら意見を交わすことが可能になり、Googleドキュメントの共同編集機能を活用することで、メンバー同士が遠隔から同じファイルを編集することが可能になります。そのため、Google Workspaceを活用することにより、メンバーの物理的な距離を感じさせることなく業務を進めることが可能になります。
メーリングリストでグループ連絡の円滑化
Google Workspaceには「Googleグループ」とよばれる機能が存在し、複数メンバーで共通のメーリングリストを作成できます。メールを送付する際に、個人のアドレスを一人ひとり入力するのは手間になります。メーリングリストを利用すると、特定の目的によって設定されたメーリングリストを宛先に含めるだけで、送信したいグループのメンバー全員にメールを送ることが可能です。例えば、サービスの問い合わせ窓口用のメーリングリスト、プロジェクトチームのメーリングリスト、部門のメーリングリストを作成すると、情報連携が円滑になります。
社員研修などオンボーディングの充実
Google Meetのビデオ会議機能を用いることで、研修資料を投影しながら社員研修を行えます。また、Google Meetの「ライブストリーミング」という機能を使うことにより、
最大10万人に対して同時に配信することが可能です。なお、この10万人は視聴専用のゲストになるため、動画の録画やコメント、画面共有などの操作はできません。
Google Workspace(ワークスペース)の料金プラン
Google Workspaceの料金プラン・機能についてご紹介します。
プラン | Business Starter | Business Standard | Business Plus |
月額(1ユーザー) | 680円 | 1,360円 | 2,040円 |
Googleドライブ容量 | 30GB | 2TB | 5TB |
Meetの最大参加人数 | 100人 | 150人 | 500人 |
※料金は2022年10月27日時点の情報、税抜き表記です。
※上記の他にEnterpriseと呼ばれる大企業向けのプランが存在します。料金について別途問い合わせが必要。
最も料金の安い「Business Starter」でも、Google Workspaceの基本的な機能を全て利用できます。各プランの主な違いは、ドライブの容量とGoogle Meetの最大参加人数です。プランの変更はいつでも変更が可能です。そのため、Business Starterで初めてみて、様子を見てから必要に応じて上位のプランに切り替えていくといったことも可能です。
おわりに
Google Workspaceを活用することで、例え遠隔であってもメンバーとコミュニケーションを取りながら一つのファイルを共同で編集したり、メンバーと予定を共有したりなどすることで、組織のコミュニケーション強化や生産性向上が期待できるでしょう。本記事では、Google Workspace(ワークスペース)の概要や各アプリケーションの説明、活用事例、料金プランについて紹介してきました。まずはBusiness Starterプランからはじめてみて、自社の利用用途や会社の規模に応じてプランを決めていくと良いのではないでしょうか。