Web広告について調べていくと、よく目にする広告施策の一つにリスティング広告があります。ビジネスパーソンであれば一度は聞いたことのある言葉だと思いますが、自分の言葉でそのシステムや運用方法について説明しようとすると、なかなか難しいビジネス用語でもありますよね。そこで本記事では、これからWebマーケティングを学ぶ人や、初めてWeb関連部署に配属されたビジネスパーソンの方向けに、リスティング広告の基本知識にはじまり、そのメリットや注意点、運用方法や費用システムなどについて詳しく解説します。
リスティング広告とは
まずは、リスティング広告の概要について説明します。
検索エンジンの検索結果に表示される広告
リスティング広告(Listing Advertisement)とは、「検索連動型広告」のことで、ユーザーが検索したキーワードと連動して検索結果画面上に表示されるテキスト形式の広告です。
上の画像のようにGoogleや Yahoo!といった検索エンジンで検索を行うと、オーガニック検索(自然検索:広告などを含まない純粋な検索結果のこと)の上部・下部などに「広告」という表記を伴って表示されているのがリスティング広告になります。リスティング広告の運営母体として広く認知されているのはGoogle広告とYahoo!プロモーション広告(以下、Yahoo!広告)があります。
リスティング広告の仕組み
初心者の方でも迷うことなく運営できるように、リスティング広告のアカウント構造を理解しておきましょう。Google広告、Yahoo!広告ともに「アカウント」「キャンペーン」「広告グループ」「キーワードと広告」という4つの階層で構成されています。広告の配信を行うためには、これらの5つの項目を作成・設定する必要があります。
アカウント
アカウント情報、支払い情報、ユーザーの権限の管理などを設定する項目です。基本、1企業1アカウントで広告を運用します。
キャンペーン
広告を管理するための単位です。各キャンペーンの中に広告グループを作成します。予算、スケジュール設定、曜日・時間帯、地域、デバイスなどの管理が行える項目です。
広告グループ
同じテーマを持つキーワードや広告をまとめた単位です。この項目で対象外キーワード、デフォルトの上限クリック単価などを管理することができます。
キーワード
商品やサービスに関連する語句を設定する項目です。ユーザーがキーワードを検索したときに広告が表示されます。
広告
検索結果に表示される広告文を設定する項目です。タイトル、説明文、配信URLなどから構成されます。
これらの項目には、個数制限があります。Google広告、Yahoo!広告によって個数制限の違いがありますが、自社の目的や事業規模に合わせて的確に運用できるようにキャンペーンや広告グループの設定は社内でしっかりと意見をすり合わせておきましょう。
リスティング広告を運用する上で重要なクリック率
リスティング広告の効果を分析する上で重要な指標は、クリック率(CTR:Click Through Rate)です。クリック率は、ユーザーに広告が表示された回数(インプレッション数)のうち、ユーザーが広告をクリックした割合を計算したものです。リスティング広告はユーザーが広告をクリックした数に応じて料金が発生する仕組みになっていますので、広告予算を考える上でもクリック率は重要です。
リスティング広告と他施策の違い
概要が掴めたところで、リスティング広告の特徴を理解するために他の施策との違いも明確にしておきましょう。
SEOとの違い
リスティング広告の強みは、広告費を払えばすぐに上位表示が可能であるという即効性です。それに比べて、SEOに関する対策には即効性はありません。また、リスティング広告には費用がかかりますが、自社で対策を行えばSEOは費用がかかりません。
検索エンジンにコンテンツが高く評価されたということは、それだけユーザーの求めるニーズに答えた情報発信が行えていることになります。リスティング広告に対する認知は高くなってきています。広告を回避しようとするユーザーは一定数いますので、オーガニック検索で上位の記事は、リスティング広告よりもクリックされる確率が高いのです。
しかし、検索アルゴリズムのアップデートが常に行われているので、SEOを行えば必ず検索上位になるという保証はありません。その一方で、良質なコンテンツを数多く作成できれば検索上位を狙える可能性も着実に高まっていくのも事実です。高品質なコンテンツを作成するためには、それなりのコストも必要になってきますが、オーガニック検索で上位表示されるコンテンツは企業の資産にもなりので、中長期的な観点で取り組むことが非常に大切です。
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SEMとの違い
SEMとは「Search Engine Marketing(検索エンジンマーケティング )」の略語です。SEOは、ご存じの通り「Search Engine Optimization(検索エンジン最適化)」の略語です。SEOはオーガニックの検索結果で上位表示を狙うための施策に対し、SEMは、検索エンジン上で行うマーケティングの総称したものです。教科書的には下の画像のようにSEOとリスティング広告を内包しているのがSEMなのです。しかしながら実際の現場業務ではSEM=リスティング広告として語られることが一般的です。
ディスプレイ広告との違い
ディスプレイ広告は代表的なWeb広告の一つで、検索連動型の広告であるリスティング広告に対し、コンテンツ連動型の広告であると言われています。検索広告が主にテキストフォーマットであることに対して、ディスプレイ広告は一般的にはバナー画像がメインとなります。ただし、ディスプレイ広告の中にも検索と連動して表示されるものもあり、Webマーケターによる解釈も一様ではありません。一般的に言われているのは、ディスプレイ広告が、主に自社の商品・サービスを知らない潜在ユーザーに広くアプローチする方法であるのに対し、リスティング広告は、主に自社の商品・サービスを知っているが実際の購入までには至っていない比較的購買意欲が高いと予想される顕在ユーザーにアプローチする手法であるとされています。こうした観点からも、リスティング広告の導入を検討する場合は、広告のターゲットとなるユーザー層を明確にしておくことが重要になるのです。
リスティング広告を運用する3つのメリット
次に、リスティング広告の運用する3つのメリットについて説明します。
メリット1.即効性が高い
リスティング広告は、適正なキーワード選択を行えば、短期間で確実に検索上位に表示させることができるので、即効性が高いのです。また、こちらが設定したキーワードを検索するユーザーは、その商品・サービスを購入したい、利用したいといった意欲が高いユーザーになります。そのため、狙ったターゲット層に向けて配信できる広告となり、こうした側面からも即効性が高い施策であると言えます。
メリット2.運用コストを調節できる
リスティング広告は、比較的低予算から出稿が可能です。クリック課金制で最低出稿金額も決められてないので、検索キーワードによっては数百円単位からスタートすることも可能です。また、クリックされない場合は費用はかからないというものメリットです。加えて、広告が配信される時間帯や配信される地域の設定によっても、費用を調節することが可能です。予算が少ない場合でも、特定の時間帯・地域に絞って広告配信することで効率良く運用していくことができる点も大変便利です。
メリット3.広告内容を改善しやすい
リスティング広告は、広告の効果検証がしやすいのも特徴の一つです。管理画面から、キーワードごとのクリック単価、コンバージョン率(CTR)、広告の表示回数、LPを訪問したユーザー数などを確認することができます。そうしたデータを検証することで、改善点を洗い出しやすいのです。また、幅広く用いられている広告なので、数多くの知見やノウハウが蓄積されています。例えば「リスティング広告 成功させる方法」といった検索を行ってみると、非常に数多くの記事や動画コンテンツがヒットします。また、Googleの公式ヘルプページでサポートされている説明も非常に丁寧なので、初心者でも十分に運用方法を理解することが可能です。加えて、リスティング広告のサポートを得意とするマーケティング・コンサルティング会社も数多く存在するので、その中から自社の事業規模にあった専門家のサポートを探すこともできるというメリットもあります。
リスティング広告を運用するときの3つの注意点
次に、リスティング広告の運用するときの注意点についても3つのポイントに絞って説明します。
注意点1.継続的に運用コストが必要
比較的低予算からスタートできるリスティング広告ですが、継続的に運用コストがかかってきますので注意しましょう。オーガニック検索で上位になれば、リスティング広告の必要性は少なくなってきます。SEOで検索上位に表示されるようになったら、他の広告にシフトしても良いかもしれません。
注意点2.運用のためには知識が必要
的確な検索キーワードを設定するには、統計学や市場分析、競合他社分析、最新トレンドなども含めた幅広いマーケティングの専門知識が必要になります。また、広告の管理画面の操作についても、それなりの知識や慣れが必要になってきます。
注意点3.他社との競争になりやすい
リスティング広告は、入札で広告枠を獲得します。人気のあるキーワードは、それだけ入札額も高くなる傾向がありますので注意が必要です。ブルーオーシャン戦略で、キーワードの選定でニッチな分野を探すという視点も重要になってきます。ただし、不動産業界など「賃貸 池袋」「リノベーション 中古マンション」といったように、決まった検索フォーマットの中で、入札を競わなければいけない業界もあるので、入札額の見極めにはそれなりに経験も必要になってくるでしょう。
リスティング広告の運用にかかる費用の目安
最後に、リスティング広告の運用にかかる費用について解説します。
クリック課金制
前述のように、リスティング広告はユーザーが広告をクリックした場合にのみ料金が発生するクリック課金制が採用されています。クリック課金で、広告1クリックあたりの平均費用のことを「クリック単価」と呼びます。「クリック単価」は、CRC(Cost Per Click)という略語が用いられることもあります。このクリック単価が低ければ低いほど、広告の費用対効果は高くなります。広告費÷クリック数で計算できますので、覚えておきましょう。「クリック単価」は、リスティング広告を運用していく上で重要な指標です。広告でユーザーをサイトへ流入させる単価であるとイメージすると、その重要性についても理解しやすいでしょう。
1クリックあたりの費用は入札で決まる
リスティング広告は、広告主が広告を表示したい検索キーワードに対して、クリック単価の最高額を設定して入札を行うオークション制が採用されています。この最高額は、Google広告では「上限クリック単価」、Yahoo広告では「入札単価」と呼ばれています。管理画面上で、キーワードや広告グループに対して入札最高額を設定できるようになっているので、入札方法自体にそこまで専門的な知識は必要ありません。
自動入札について
広告主が入札最高額を設定する他に、自動入札という機能も搭載されています。自動入札では、予算内でクリック数やコンバージョン数を最大化できるように入札単価を自動的に調整してくれるシステムです。自動入札は、手動で細かな設定を行う必要がないので、運用の作業的なコストを削減することができます。また、「デバイス」「曜日・時間帯」「年齢・性別」「興味関心」「サイトで閲覧したページ数」「サイトで閲覧した商品の金額」「実際の検索語句」といったユーザーの無数のシグナル(要素)を元に入札価格が最適化されるので、より精度の高いターゲティングによる広告配信が可能となるのです。
一方で、配信の最適化までにある程度の学習期間が必要となり(2〜3週間かかる場合もある)、その最適化にも過去の運用実績が必要となるので、リスティング広告のメリットである即効性が鈍くなるというデメリットもあります。また、予算変更や配信調整をし直すと、最適化が最初の状態に戻ってしまうので、柔軟な広告運用が難しい方式であるという点も理解しておきましょう。
まとめ:リスティング広告は他のマーケティング施策と組み合わせて使おう
検索で上位表示されることは、どの業界でも大きな命題となっています。そのための施策の中でも、即効性の高いリスティング広告は重要な役割を担っています。特に新興の企業や、新規参入する商品・サービスにおいては、最初に導入を検討すべき広告の一つです。そしてSEOなどの他のマーケティング施策と組み合わせることで、リスティング広告はより意義を持った施策として効果を発揮できるという点もしっかりと意識しておきましょう。本記事で、リスティング広告の特徴や運用方法を正しく理解し、ぜひ実際のマーケティングに役立ててください。
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