他人の著作物を紹介・批評する際には引用が必要となります。また、論文等において自分の論説の根拠を示す際も、資料の引用による事実の裏付けは大切です。ただし、引用する際は、著作権を侵害することのないよう注意が必要です。本記事では、引用と似ている言葉である参照や参考、転載との違いや、引用の基本的なルールについてわかりやすく解説します。
そもそも引用とは?なぜルールを守って書く必要があるの?
引用とは、著作権法上の規定の一つで、他人が著作した文章などを利用するときに、目的のための正当な範囲内であれば、著作権者の許諾なしで利用できるというものです。著作物は、著作権法によって保護されていて、無断使用は許されません。しかし、他者の文章や論説などを全く使用できないとなると、文化の発展に支障をきたす恐れがあります。また、自分の論を裏付けるために、他の人の研究結果や文章が必要となることもあります。そのため、著作権を侵害しないようにルールを守りながら、利用する必要があるのです。また、地の文章と引用文の関係が「主従関係」となる必要があります。主軸は自分の文章や主張です。引用文はあくまでも主軸を裏付けるもの、または、主軸の説明の一部でなければなりません。仮に、主従逆転してしまった場合は引用とはみなされません。場合によっては、転載や盗作などとみなされる危険性があります。また、引用する文章が必要以上に長すぎてはいけません。客観的に見て引用の必要性が理解できる点も大切なポイントです。
引用の種類
引用には二つの種類があります。一般的には直接引用が望ましいとされています。二つの違いをよく理解し、必要に応じて使い分けましょう。
直接引用
他者の書いた文章などを一言一句変えずにそのまま記載することを指します。また、引用部分に誤字があった場合でも改変はできない点に注意が必要です。また、引用文であることがはっきりわかるように、カギカッコなどの引用符を利用し、自分の文章と区別する必要があります。出典元がはっきり分かるよう著者名、タイトル、発行年などを読者に対して明確に記載しましょう。
間接引用
他者の文章をわかりやすく要約して使用することを指します。この場合も、要約内容の出典元や著者などがわかるよう、明記する必要があります。また、要約するうえで、元の文章の意味や解釈を勝手に変更することがないよう、細心の注意を払わなければなりません。
引用と参照・参考・転載の違い
参照の意味
参照とは、本文の理解を深めるために、手助けになるよう用意された図表や文章などの情報源を、本文とともに照らし合わせて見る際に使用される言葉です。参照の対象物は、資料や文章など、目視できるものとなります。考え方や態度などの、具体的に目に見ないものは対象になりません。例えば、「こちらの資料をご参照ください」のように使います。論文や書籍などを書くにあたり、参照にした文章や図などの資料がある場合、文末などで参照資料として紹介することがあります。紹介する場合には、出典元がはっきりとわかるよう明記しましょう。
参考の意味
参考とは、参照のように目視できる資料や文章だけでなく、人の行動や思考と言った目に見えないことにも使えます。よって、参照よりも広い範囲のものが対象です。また、参照は照らし合わせて理解を深めることを主としますが、参考は対象物と照らし合わせたうえで、その考え方などを取り入れる、という意味を含む場合もあります。使用例は、「部長のお考えを参考にして、企画を進めます」「これらの資料を参考に、来期の予算を練りなおす」などです。また、小説などで他の書籍や論文を参考にして執筆された場合には、巻末などで参考資料として紹介することがあります。
転載の意味
転載とは、引用と同様、他人の著作物を自分の作品内に掲載することを意味します。引用と異なる点は「自身の著作物の従たる範囲を超えて」掲載するという点です。著作権法で転載が認められている著作物は、以下の2つに限定されています。
- 公的機関が作成した広報資料等
- 時事問題に関する論説
なお、転載の目的や方法がそれぞれ限定されていいるため、注意が必要です。上記以外のものから転載を希望する場合は、著者の許諾を得る必要があります。また、転載の際、転載元の文章の改変はできません。そして、自分の文章と転載した文章とを明確に区別しなければなりません。
著作権を守って引用するための3つの書き方の決まり
著作権を守って引用するためには、以下の書き方の決まりを知ったうえで、守る必要があります。
決まり1.引用であることを記載する
地の文章と引用文は、区別する必要があります。一般的にはカギカッコやダブルクォーテーションマークなどの引用符でくくる方法があります。また、基本的には引用直後に、著作物の著者名やタイトル、発行年など、出典元が特定できる情報を明示しましょう。また、地の文章内容や文章量が「主」、引用文は「従」でなければ引用とは認められず、転載となるため、注意が必要です。
決まり2.引用・参照・参考・転載を正しく記載する
文章の利用がどの種類にあたるのか、正しく記載しましょう。参照資料や参考文献を、文の最後にまとめて列挙されることはよくあります。また、どの場合であっても、必ず出典元が明確にわかる情報を提示しなければなりません。転載の場合は、先述した一部の例外を除き、著作者や著作権者の許諾が必要となります。
決まり3.著者の意図に反していないか確認する
引用の際は、原文の意図に反した使い方をしていないかについても確認しましょう。著者の意図に反した使用は、後々トラブルに発展する可能性もあります。
【直接引用 / 間接引用別】引用の基本的な書き方
具体的な書き方について解説します。
長い直接引用の書き方
長文を引用する場合は、ひとつのブロックにまとめましょう。引用部分の前後に文字のスペースをあけたり、字下げをしたりすることで、地の文と区別が可能です。また、さらに文字のフォントを変更することでより明確に区別できるでしょう。使用する文章が相当長い場合は、間に「(中略)」や「略」といれ、省略したことがわかるように明示しなければなりません。引用後には必ず、題名や著者名、発行年、さらに必要な場合は該当ページなどを記載し、出典元を明らかにしておきましょう。
短い直接引用の書き方
短文を直接引用する場合は、カギカッコなどの引用符で括ります。引用後には必ず、題名や著者名、発行年、該当ページを明記し、出典元を明らかにしておきましょう。注釈をつけたうえで、巻末などでまとめて出典元を紹介することも可能です。
間接引用の書き方
間接引用の場合は、意味を変えずに元の文章の要約し、紹介します。読者に、引用であることが明確にわかるようにする必要があります。引用の前後に、出典元がわかるよう明記しましょう。場合によっては注釈をつけ、巻末などでまとめて紹介します。
引用に使う記号(引用符)とは?
引用に用いる引用符については、特に決まりはありません。カギカッコ(「」)や二重カギカッコ(『』)などがよく用いられます。また、Webサイトにおいてはダブルクォーテーションマーク(””)を利用することが多く見られます。どの場合でも、地の文章と引用文とを明確に区別することを目的として使われています。また、同一文章内では利用する記号を統一しておきましょう。
【ケース別】知っておきたい6つの引用ルール
ケースごとに、知っておきたいルールについて解説します。トラブルを未然に防ぐためにも、ルールを理解して利用しましょう。
ルール1.引用部分がページをまたぐ場合
ページをまたぐ場合、ページ数を明記しているならばわかるように記載しましょう。例えば、単独のページの場合、(著者名、タイトル、発行年、P51)と記載しているならば、ページをまたぐ際は、(著者名、タイトル、発行年、P51-52)と明記します。その情報を見た人が、出典元に辿り着けるように記載する必要があります。
ルール2.翻訳書を引用する場合
基本的に孫引き引用は推奨されていません。孫引き引用とは、Aの著作物の引用がBでされていた場合に、原本であるAを確認することなく、Bの引用箇所をそのままBの出典として引用紹介するというものです。その場合、Bによる一次引用部分が本当に正確かどうかわかりません。しかし、翻訳書がすでに著作物となっている場合、翻訳書も著作物となります。そのため、原文からでも、翻訳書からでも引用することが可能です。翻訳書を引用した場合の出所明示としては、以下の項目が望ましいとされています。
- 原作者名
- 書名
- 原作発行年
- 翻訳者名
- 翻訳書名
- 翻訳書の発行年の記載
ルール3.引用元の著者が2人いる場合
著者が2名の場合は2名の氏名を併記します。
ルール4.引用元の著者が3人以上いる場合
著者が3名以上の場合は、一度目は全員の名前を書きます。二度目以降の使用時には代表者1名の名前を書き、「〇〇他」と記載してください。ただし、執筆先によっては、最初から「代表者一名他」で統一する、といった独自のルールが儲けられていることもあります。その際は先方のルールに従いましょう。
ルール5.複数の引用元がある場合
複数の引用元がある場合は、その都度記載するとよいでしょう。スペースの都合上、出典元をすぐに記載できない場合は、(注1)(注2)などと、注釈をつけておき、最後にまとめて紹介します。同じ箇所で複数の文献を引用する場合は,同じ( )内に並べて「・」「、」「;」などで区切るのが一般的です。この時に、著者の列挙順に悩んだ場合は、著者の姓の五十音順に列挙しましょう。アルファベット表記等の著者がいる場合は、アルファベット順を採用してください。出典元の文献に著者が複数いる場合は、一人目の姓の頭文字で判断します。また、同一著者の文献を複数引用するときは、発行年が古いものから順に列挙します。
ルール6.同じ引用元を複数回使う場合
同じ引用元を複数回使う場合は、一度目は題名、著者名、発行年、ページ数など、必要なすべてを記載します。基本的には二度目以降も同様に記すことが望ましいです。しかし、場合によっては、「同上」や「前掲」として簡略化しても構いません。その場合も、地の文との違いがわかるように区別する必要があります。また、必要に応じて、文中では脚注や注釈を用い、巻末ですべて紹介する形をとりましょう。
これってOK?出典元別に知っておきたい引用ルール
引用におけるルールは多岐に渡っています。出典元別に、知っておきたいルールについて解説します。また、どの場合であったとしても、引用を行う際には共通のルールがあります。あらためて確認しておきましょう。
- 引用する必然性がある
- 自分の著作物と引用部分とが明確に区別されている
- 著作物との主従関係が明確である
- 出所の明示がされている
- 公表された著作物である
論文・文献の引用ルール
論文や文献から文章を引用する場合、著書名、タイトル、発行年、必要であればページ数を記載し、出典元を明確にしましょう。また、すでに他で使われている引用文を、原点や原文を確認しないまま利用するのは好ましくありません。それを、孫引きと言います。孫引きが好ましくない理由は、一次引用の時点で原文との間に乖離が起きている可能性もあるからです。可能な限り原文での確認し、引用することが望ましいです。やむを得ない事情で孫引きが必要な場合でも、原典・原文の出所に関してあわせて明示するよう心がけましょう。
ネット情報の引用ルール
インターネットサイトで、他のサイトの引用を行う場合、引用タグ(blockquote)を使うことで、検索エンジンにコピーコンテンツではないことをアピールできます。出典元サイトはサイト名にURLのリンクをつけて明示するのが一般的です。
具体的な記載方法は下記のとおりです。
また、読者に向けて視覚的にもわかるように、ダブルクォーテーションマークなどを用いて、地の文章と引用文とを区別しましょう。
ところで、Web文献をはじめとしたインターネットのサイトのページ情報は、出版された情報と比較すると、いつでも自由に改変や削除をすることが可能です。場合によっては、ネット情報からの引用は慎んだ方がよいこともあります。また、必要に応じて、サイト名とURLに加え、「いつ確認した情報であるのか」についても、日付を併記しておきましょう。そして、念のために該当ページをプリントアウトしておくと、突然の削除や変更時に対応できるので安心です。
Twitterの引用ルール
他人のツイートを自分のブログやサイトに貼って紹介したいと思うことがあるかもしれません。そのような場合、まず、そのツイートを引用する必然性があることを確認しましょう。自サイトに、Twitterの埋め込み機能を利用して、ツイートを紹介することは著作権侵害には当たりません。しかし、Twitterのプロフィールなどに「無断転載禁止」と書いてある場合、法的拘束力がなくても、著作者の心境に配慮し、後のトラブル防止のためにも無断での紹介に関してはやめておいた方が無難でしょう。また、元のツイートがテレビのスクリーンショットや雑誌の中身の写真などを掲載して著作権侵害をしていた場合も、注意が必要です。基本的には、気に入った画像があり「無断転載禁止」と書かれていた場合には、個人での利用にとどめておくと安心です。SNSでの紹介は個人での使用の範疇を超えています。なお、Twitter内で、第三者のツイートを丸ごと真似する、いわゆる「パクツイ」や「拾い画の無断掲載」、そして、「第三者の投稿画像の無断掲載」などは、著作権侵害に当たる可能性があります。好きなキャラクター画像をアップしただけのつもりが、気付かないうちに著作権を侵害しているかもしれません。Twitterを利用する際には、注意が必要です。著作権侵害の心配なく、他人のつぶやきを広めたい場合、リツイート機能や引用リツイート機能を利用しましょう。万が一、自分の絵や写真などがTwitter上で無断転載された場合、Twitterのヘルプセンターの「著作権侵害について報告する」という項目から申し立てができます。ただし、必要に応じて著作権侵害者に対して、自分の個人情報や連絡先などをすべて開示しなければなりません。場合によっては、弁護士などの代理人への依頼も検討するとよいでしょう。
画像の引用ルール
画像引用の際も文章同様、一般的なルールに基づいて正しく引用する必要が生じます。公表された著作物に対して利用できるものです。非公表のものを、著作者に無断で勝手にアップするのは引用ではありません。また、人物が映っている写真やイラストを利用する場合、著作権のほか、肖像権、パブリシティ権などにも気を配る必要があります。肖像権とは、人格権の一つであり、顔や身体など、自分の容姿を他人に無断で利用されない権利を指します。写真だけでなく、絵画や彫刻などにも該当するので気を付けましょう。パブリシティ権とは、芸能人やスポーツ選手、文化人をはじめとした著名人がもつ、自身の氏名や肖像などから生じる経済的利益のことを指します。こちらも人格権の一つです。この二つは、写真を撮った著作者ではなく、写真に写っている人の権利となります。侵害すると、損害賠償や、差止め請求の対象となるため注意が必要です。なお、引用の基本的なルールとして原則改変不可ですが、肖像権を守るために画像にやむを得ずモザイクをかけることは、問題ないとされています。
動画の引用ルール
動画引用の際も文章同様、ルールに基づいて正しく利用しましょう。公表された著作物に対して利用できるものですから、非公表の動画を著作者に無断で勝手にアップするのは引用ではありません。画像のルールで紹介した、肖像権やパブリシティ権などにも同様に配慮する必要があります。YouTubeや、ニコニコ動画といった動画サイトには「埋め込み機能」がついています。埋め込みコードを利用すれば、著作権侵害には当たりません。ただし、元の動画が違法にアップロードされたものである場合は注意が必要です。できる限り公式が公開している動画を利用するなどして、トラブル防止に努めましょう。
図の引用ルール
図の引用の際も、ルールに基づき正しく利用しましょう。図の出典元がわかるように明記する必要があります。図の一部を勝手に書き換えることは、ルールに反しますのでご注意ください。ところで、図表を作るためにデータが利用されている場合、元のデータそのものは事実や事象であり、思想または感情を有していないため、著作物には該当しないことがあります。そのようなデータは、著作権保護の対象とはなりません。しかし、データそのものは著作物でなくとも、データを元に作られたグラフは著作物になるので、使用に際しては注意が必要です。
まとめ:引用のルールを守り、著作権侵害によるトラブルを防ごう
文章を公開する際は本記事で解説した引用のルールを考慮し著作権侵害などのトラブルを防ぎましょう。
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