マーケティングにおける「エンゲージメント」とは?意味や調査方法・高めるための5つのポイントを紹介

近年、ビジネスシーンでよく耳にするようになった言葉の一つに「エンゲージメント」という概念が挙げられます。現代は、企業が人や社会と向き合う姿勢が問われるようになってきていますが、エンゲージメントとはこうした姿勢とも深く関連し、企業の評価を高めていく上で重要な事柄になります。特にSNSの運用において、知っておかなければいけない知識です。そこで、本記事ではエンゲージメントの概略、エンゲージメントの調査方法、エンゲージメントを高める方法などについて詳しく解説します。

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マーケティングにおける「エンゲージメント」とは

エンゲージメントには、大きくユーザーに対するものと従業員に対するものの2つがあります。本記事では、マーケティングで用いられるユーザーに対するエンゲージメントについて詳しく説明します。

エンゲージメントの意味

エンゲージメント(engagement)は、英語をそのまま直訳すると「約束、契約、婚約、誓約」などを意味します。ビジネス用語で用いられるエンゲージメントという言葉は、企業と人との関係性を測る尺度の一つとして使用されています。例えば、ユーザー(顧客)が企業・商品・ブランドなどに対して持つ「愛着度」や、従業員が企業に対して持つ「愛着心」や「思い入れ」といったものが、エンゲージメントです。後者は人事や組織開発分野で使われる「従業員エンゲージメント」を指しており、前者がマーケティングにおけるエンゲージメントになります。

エンゲージメントには広告や自社メディアに対するユーザーの反応なども含まれますが、特にそれが重要視されるのはSNS運用においてです。SNS運用における企業の社会的な評価の指標として用いられる値の一つにフォロワー数がありますが、このフォロワー数というのは、必ずしも企業に対して好意的なユーザーの数を表すものではありません。中にはアンチと呼ばれるようなユーザーも含まれており、監視や粗探しのために企業アカウントをフォローしていることもあるからです。これに対し、エンゲージメントとは、SNSの投稿に対してどれくらい好意的な反応があったのかを測る指標です。マーケティングにおいて、より重要な指標はエンゲージメントなのです。

エンゲージメント総数(トータルエンゲージメント)の意味

エンゲージメントとは、企業・商品・ブランドなどに対する好意的な反応のことを指すことは前述した通りですが、SNSにおける好意的な反応には様々なアクションが含まれています。SNSによってアクションの内容は異なりますが、例えば投稿に対する「いいね」「シェア」「コメント(返信)」「リンクのクリック」「プロフィールのクリック」などがあります。これらの反応のアクション数をまとめたものがエンゲージメント総数です。

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エンゲージメントとインプレッションの違い

エンゲージメントと関係の深い指標としてインプレッションという用語があります。このインプレッション(Impression)は、直訳すると「印象、刻印、痕跡」といった意味の英単語です。SNSマーケティングにおけるインプレッションとは、投稿(主に広告)が見られた回数を指しています。「imp」や「imps」と略して単位のように用いられることも多く、投稿が1回表示されたら「1imp(1imps)」といった表現でインプレッション数を数えることもあります。インプレッションは投稿が見られた回数であるため、1人の人が複数回見ることでもカウントが増えていきます。後述するSNSのエンゲージメント率の計算方法で、インプレッション数が必要になってくるので、この2つの違いについて理解しておきましょう。

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エンゲージメント率とは

エンゲージメント率とは、企業側から顧客に対しての情報発信(広告、メディア記事、投稿、ツイートなど)に対して、どれくらいのエンゲージメントが発生したかを図る指標です。SNSでは、インプレッション数、リーチ数、フォロワー数などに対して、どれくらいのエンゲージメントが発生したかを計測したのがエンゲージメント率になります。

リエンゲージメントとは

エンゲージメントに関連した言葉にリエンゲージメント(Re-Engagement)という言葉があります。この言葉は、「再び」という意味を持つ「re-(リ)」という接頭辞がついていることからもわかる通り、過去にエンゲージメントがあったユーザー(顧客)に対して、再びアプローチを行うことを意味します。Webマーケティングでは、「リエンゲージメント広告」と呼ばれる施策もよく用いられます。「リエンゲージメント広告」とは、過去に広告クリックなどのエンゲージメントがあったユーザに対して再び広告を配信するターゲティング手法です。

媒体別のエンゲージメントの調査方法

次に、エンゲージメントを実際にどうやって調査するかについても解説します。エンゲージメントを調査する上で、重要になってくるのがエンゲージメント率です。エンゲージメント率の計算方法は、媒体やSNSによって異なります。その調査方法についても詳しく見ていきましょう。

Twitter

Twitterにおけるエンゲージメントの種類は、ツイートに対する「いいねの数」「リツイート数」「返信数」「ツイートの詳細閲覧数」「投稿からのフォロー数」「画像や動画のクリック数」「リンクのクリック数」「プロフィールのクリック数」などがあります。それらのエンゲージメントの総数を、母数となる「インプレッション数」で割り算します。以下がTwitterのエンゲージメント率計算式です。

エンゲージメントの総数÷インプレッションの合計数

100回見られたツイートに対して、10のエンゲージメントが発生した場合は、エンゲージメント率が10%ということになります。「インプレッション数」とは、ツイートがユーザーのタイムラインで見られた回数なので、リツイート数が多いツイートやハッシュタグがトレンドに挙がるようなツイートは、必然的に「インプレッション数」も多くなります。

Facebook

Facebookのエンゲージメントの種類は、投稿に対する「いいねの数」「コメント数」「シェア数」「クリック数」となっています。そして、それらエンゲージメントの総数を投稿の「リーチ数」で割ったものがエンゲージメント率になります。以下がFacebookのエンゲージメント率計算式です。

エンゲージメントの総数÷投稿のリーチ数

100人に見られた投稿に対して、10のエンゲージメントが発生した場合は、エンゲージメント率が10%ということになります。「リーチ数」は投稿を見た人の数です。リーチ数はユニークユーザー数ですので、同じユーザーが投稿を3回見てもカウントは1回になります。

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Instagram

Instagramのエンゲージメントの種類は、投稿に対する「いいねの数」「コメント数」「保存数」となっています。Instagramには公式のエンゲージメント率計算式はなく、エンゲージメントの総数を、「インプレッション数」「リーチ数」「フォロワー数」のいずれかから分母を選択して割り算をします。以下がInstagramのエンゲージメント率計算式です。

エンゲージメントの総数÷(インプレッション/リーチ/フォロワー数から1つ選択)

ここでは「フォロワー数」を例に考えてみましょう。100人のフォロワー数があるアカウントに、10のエンゲージメントが発生した場合は、エンゲージメント率が10%ということになります。ただし、フォロワー数に関してはアクティブユーザーではない(現在Instagram自体を利用していない)アカウントも含まれているので、その点は留意しておきましょう。また、分母を途中で変更すると継時的な比較検証ができなくなるので、どの数値を分母にするかは慎重に検討しましょう。

広告

バナー広告、動画広告といった情報発信に対しての好意的な反応も、エンゲージメントとして調査することができます。Google広告、Yahoo!広告、YouTubeといった各種サービスの管理画面などからもエンゲージメントに関する項目を確認することができますが、より詳しい解析が必要な場合は調査会社に依頼してエンゲージメントを調べることもできます。

また、Web広告の中には、CPE(Cost Per Engagement)課金型広告というものがあります。CPE課金型広告とは、エンゲージメントが発生するごとに課金される広告で、代表的なサービスとしてGoogleエンゲージメント広告があります。こうした広告サービスを利用することでもエンゲージメントを調査することが可能です。

メディア

オウンドメディアなどの自社サイトのエンゲージメントを調査するには、サイト解析サービスを利用すると良いでしょう。Googleアナリティクスには、エンゲージメント指標というものがあり、サイトコンテンツに対して、「直帰率」「ページ/セッション(回遊率)」「ページの滞在時間」といったユーザーの行動分析から、ユーザーの関与や親和性を計測することが可能です。

SNSでエンゲージメントを高めるための5つのポイント

エンゲージメントについて理解が深まったところで、SNSでエンゲージメントを高めるための5つのポイントについて解説します。

1.適切なペルソナ設定を行う

SNSでエンゲージメントを高めるためには、まずペルソナ(企業や商品のメインターゲットとなる架空の顧客像)の設定を、しっかりと決めてマーケティングを行っていくことが大切です。性別、年齢、職業、収入などリアリティのある人物像を設定し、その人物像にあった情報発信を行うことで、訴求力を高めていくことができます。また、ペルソナ設定を行うことは、SNSマーケティングを担当するチームの共通理解を図っていく上でも重要な事柄です。

2.エンゲージメントを分析してニーズを把握する

実際にSNSを運用して得られたエンゲージメントのデータから、ニーズを分析していくことも大切です。「どのような情報によく反応がつくのか」「何時頃の投稿が反応が良いのか」といった分析を行うことで、より訴求力の高い情報発信が可能になります。また、分析から予測される反応とは異なる結果が得られることもあります。ネガティブな反応があった場合などは、軌道修正をかけていくことがリスクマネジメントとして非常に大切になってきます。

3.ユーザーとコミュニケーションを行う

エンゲージメントを高めていくには、ユーザーと積極的にコミュニケーションを取ることも効果的です。企業アカウントで単に告知を行うのではなく、いわいる「中の人」と呼ばれるアカウント運営担当者によってキャラクター付けを行い、ユーザーとコミュニケーションを取る事例は数多くあります。この手法の有名な成功事例としては、親しみやすいフランクな投稿で人気があるシャープ株式会社のTwitterアカウントなどが挙げられます。シャープのアカウントは、自社製品に関連する投稿に対して積極的にリツイートやリプライを行っています。

ただし「キャラクター付け」は、アカウント運営担当者のパーソナリティに頼る部分も多く属人的になりがちです。また、最悪の場合企業に相応しくない投稿によって炎上を招くリスクもあります。アンケート、質問、クイズなども、ユーザーとコミュニケーションを図る手法ですので、無理のない範囲から試していくと良いでしょう。

4.媒体にあったコンテンツを配信する

各SNSでは年齢・性別といったユーザー属性の比率が異なり、ユーザー動向も異なります。例えば、ビジュアル的におしゃれなコンテンツが好まれるInstagramと、ウィットに富んだつぶやきやサブカル的な情報発信がバズりやすいTwitterでは、同じ投稿内容でも違う反応が返ってくるでしょう。同様に、実名で行うFacebookと、匿名で行うことが多いTwitterでも違う反応が返ってくることが多いはずです。

このように、様々なメディアやSNSで同じペルソナ設定、同じアプローチ法を採用していると効果が十分に得られないことがありますので注意しましょう。媒体やSNSの持つ特徴を十分に理解し、適切なペルソナ設定と情報発信を行うことが大切です。

5.アカウントの投稿頻度を増やす

エンゲージメントを高めるには投稿の頻度を増やしていくことも非常に重要です。投稿の頻度が少なければ、アカウントを目にする機会も少なくなるからです。タレントの好感度がメディア露出度と深い相関があるのと同様に、企業・商品・ブランドに対する好感度もどれだけ接触の機会があるかが重要になってきます。繰り返し接すると好感度や印象が高まることは「単純接触効果(ザイアンスの法則)」という心理学の理論でも科学的に証明されています。

ただし、広告的な要素が強い投稿や業務的な告知が多すぎるとマイナスな反応を引き起こすこともあります。前述のようにユーザーとコミュニケーションを図りながら、適切な投稿を繰り返していくことが大切です。

エンゲージメントを分析するツールの利用について

複数のSNSアカウントを運用して、それぞれエンゲージメントを高める施策を行うのは非常に時間も手間もかかります。そこで便利なのがエンゲージメントを管理・分析ができるツールの利用です。それぞれのメディア、SNSを管理・分析するツールが提供されていますので、それらを導入すればエンゲージメントに関するさらに詳しいデータを得ることもできます。無料で利用できるものもありますが、高度な管理・分析を行いたい場合は有料プランに加入する必要なケースが多いので、費用対効果を考えながら導入してみましょう。

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まとめ:エンゲージメントを正しく把握して、分析しよう

AppleのCEOであるティム・クック氏は、新製品発表のイベントで環境に配慮した取り組みとして「カーボンニュートラル」という言葉を繰り返し発信しています。また、同社のイベント登壇者に女性が増え、人種や民族といった多様性にも配慮していることが伺えます。これは、環境問題、ジェンダーの問題、企業コンプライアンスといった事柄に対しての姿勢が、企業に対するエンゲージメントを大きく左右するようになってきていることを端的に示す事例です。

国際的な傾向として、国連サミットで採択されたSDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)への取り組みなどが企業の社会的評価で重要な要素となってきています。これは商業的でテクニカルな手法だけでは、エンゲージメントを高めることはできないことも意味しています。本記事の基本的な事項を参考にしながら、企業に対するエンゲージメントを深く考察してみましょう。

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